ショットピーニングはショットが高速で金属に衝突することで金属表面に圧縮残留応力を与える加工法である.ショットピーニングは簡便に疲労強度を向上できるため,航空機・自動車をはじめ多くの製品の部品に適用される.本研究では,ショット速度の計測に高速ビデオカメラと粒子画像流速測定(PIV)を適用し,ショット径・ショット材質のショット速度に及ぼす影響を定量的な関係式を明らかにする.また,ショット径,ショット材質,ショット速度が残留応力分布に及ぼす影響を定量的に評価した. 2021年度までに,粒径3種類の低合金鋼製ショット,および粒径3種類のセラミック(ジルコン)製ショットについて,高速度カメラとPIVを用いて,ノズルから約100mmの間のショット速度変化を計測した.ショット速度はエア圧の増加に伴って増加した.同じエア圧・材質では,粒径が小さいほどショット速度は速くなる.同じ程度の粒径においては,密度の低いジルコン製ショットでは密度の高い低合金鋼製ショットに比べて,ショット速度が速い.以上のように,ショット粒径・ショット材質,エア圧のショット速度に及ぼす影響を定量的に把握できた.また,低合金鋼ショットとジルコンショットのショット径とショット速度を変化させて,アルミニウム合金(A5052)にショットピーニングを実施した.板厚内の残留応力分布をX線回折法で計測した. 2022年度は残留応力分布を近似式で示し,式の係数をショット径とショット速度の関数で示すことを提案した.実験結果をもとに,近似式の係数を決定し,低合金鋼製ショットとジルコンショットの両方で,実験結果を模擬できることを確認した.係数を決定したショットとは異なるショット径とショット速度を用いた実験を行い,この条件でも,提案した近似式で実験結果の残留応力を模擬できることを検証し,近似式の妥当性を確認した.
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