研究課題/領域番号 |
20K05159
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森田 英俊 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40332100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザ加工 / 熱応力 / 応力拡大係数 / 脆性材料 / き裂誘導 |
研究実績の概要 |
レーザ誘起熱応力を利用して水平き裂を誘導することで、ガラスのスライス加工を実現するために、吸収率の温度依存性や線膨張係数の加熱速度依存性について、実験とFEM解析により検証を行った。 これまでに熱応力解析から応力拡大係数を求め、水平き裂の深さ位置を予測してきたが、深さ50um以下の浅い位置に水平き裂が発生する場合と、深さ300um以上の場合に、予測した深さと実験結果の間に差が生じた。この原因について調査するために、波長10.6umに対するガラスの吸収率について再測定した結果、この波長に対するガラスの吸収率が、一般的なソーダライムガラスの値よりも小さい値を示すことが明らかになった。この値を用いて、水平き裂のみが発生する深さ300um付近の加工深さについて予測したところ、実験とおおむね良い一致を得ることができた。 一方、深さ50um付近の浅い位置に発生する場合について、応力拡大係数解析を行って評価したところ、破壊靭性値以下の値しか得ることができなかった。そこで、10.6umのレーザ光がガラス表面でほとんどが吸収されることと、き裂を開口させるのに充分な応力が得られなかった事実から考察し、非常に加熱速度が速い条件下では、線膨張係数が高くなっている可能性があると仮説を立てた。そのため、本年度は加熱速度を制御できるステージヒータを用いて、線膨張係数を測定するための実験装置を製作し、実験を行った。その結果、加熱速度の上昇に伴い、線膨張係数も増大することが明らかになった。しかし、実際のレーザ加工中における加熱速度よりも、非常に低速域における加熱速度の場合しか測定できなかったため、今後は実際にレーザ加熱中に線膨張係数を測定する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの解析方法において、予測した加工深さと実験結果の間で、整合性が得られない領域が予期せず生じたため、この原因究明のために遅れが生じた。吸収率についてはすぐに実験し補正できたが、ガラスの線膨張係数が加熱速度によって変化することについては、これまでに報告がない現象であったため、その仮説をたて、照明するに至るまでに時間がかかり、研究の遅れにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
深さ100um以上の位置に水平き裂が発生する深さについては、より正確な物性値を用いることで予測できることが明らかになり、メカニズム等に誤りがないことがおおむね明らかになった。しかし、深さ50um以下の浅い位置に水平き裂が生じる場合については、線膨張係数の加熱速度依存性を考慮しなくてはいけないことが明らかになった。この現象については、ほかに報告がないため、これから新たに実験を行い、評価する必要がある。今回は、ステージヒータで測定可能な加熱速度領域について線膨張係数を検証し、加熱速度上昇に応じて線膨張係数が上昇する傾向までは明らかになったが、実際のレーザ加熱速度域における線膨張係数については評価できていないため、この測定方法について検証・実験を行い、明らかにする必要がある。その後、加工に適した断面形状を得るためのレーザプロファイルについて、応力拡大係数解析から検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用した。
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