レーザ誘起熱応力を利用して水平き裂を誘導することで,脆性材料の新しいスライス加工技術を開発するために以下の実験と解析を行った. ①レーザの加熱点を矩形とした場合と円形にした場合の水平き裂の形状の違いについて,実験と応力拡大係数解析を行ったところ,矩形熱源の方がより深い位置で水平き裂のみを発生できる条件があることを発見した.また,この条件で応力拡大係数解析を行ったところ,矩形の方が水平なき裂を発生させるのに有効であることが明らかになった.しかし,矩形熱源形状にするためにマスクを用いたため,レーザ出力の低下が大きく,実験では限られた範囲でしか発生が見られなかった.今後は,より水平な形状のき裂を誘導するために,レーザプロファイルがよりフラットトップとなるような光学系の構築が必要である.現在は,ガルバノミラーを用いた光学系を検討している. ②応力拡大係数解析で得られるき裂先端と実験結果が一致することを確認するために,偏光高速度カメラによってき裂先端位置の観察を行った.その結果,熱源後方1mm程度後方でき裂先端を確認した.また,応力拡大係数解析においても同様な結果が得られた. ③レーザ走査速度が高速で,浅い位置に水平き裂が発生する実験条件下では,き裂開口条件を満たさない結果が得られた.その原因究明のために,線膨張係数の加熱速度依存性について検証を行った.加熱速度を制御できるステージヒータを用いて,短冊状のガラスの膨張量を動画マイクロスコープで測定した結果,温度依存性以外にも加熱速度に依存して線膨張係数が増大することが明らかになった.
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