研究実績の概要 |
本研究の目的はβ型チタン合金において、重ね合わせ圧延によって合金元素の不均一分布(偏析)によるヘテロ構造を人工的に創製し、強度-靭性バランス等の機械的性質の向上を図ることにある。特にMo量が極端に異なるTi-Mo2元系ヘテロ構造や拡散が早く偏析構造の付与が難しいAl添加合金のヘテロ構造を造り込み、変形機構の混在や第2相の析出状態を局所的に大きく変化させることを試みる。 本年度は主に以下のような成果が得られた。 特性向上をもたらす新たな積層構造の組み合わせをより簡便に検討するための手法として重ね合わせ圧縮(R. Ueji, T. Inoue, Acceleration of diffusional transformation in a high-carbon steel layer composed of a sandwich-like clad steel sheet, Mater. Sci. Eng. A, 764 (2019), 138217)をチタン系合金に適用した。Mo量が極端に異なり変形機構が異なるTi-10MoおよびTi-18Moの積層構造、Al量が異なり第2相の析出量、析出形態やその特性が異なるTi-15MoおよびTi-15Mo-3Alの積層構造、さらに元素拡散しやすいO量が異なり変形機構や第2相析出に大きく影響するTi-7.5MoおよびTi-7.5Mo-0.5Oの積層構造を作成した。これらの組み合わせすべてで真空中での重ね合わせ圧縮により界面に欠陥等生じることなく積層材が作成可能であること、MoおよびAlについては圧縮ままで数μm、焼鈍処理後に数十μmの幅で濃度勾配が見られ、化学的にも十分に結合できていることが確認された。
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