研究課題
グラファイト型の六方晶窒化ボロン粉末を出発材料として、含水爆薬により爆発合成を試み、X線回折によってwBNの合成を確認した。直径10μm程度のダイヤモンド砥粒とwBN砥粒を混合させた複合固定砥粒型のソーワイヤを既存設備において製造して、ダイヤモンド基板の切削試験を実施して、ダイヤモンド砥粒のみのソーワイヤよりも切削性が高いことを示した。具体的には、グラファイト型の六方晶窒化ボロン粉末(hBN)を鉄粉に5%混合して鉄管に充填し、含水爆薬の圧力によりwBNに相変化させる。状態図によると、wBNへの相変化は常温では約12GPaで起こるとされている。本研究で使用した含水爆薬は、爆轟速度5300m/sであり、到達圧力は10数GPaと推測されるためhBNからwBNへの相変化は起こりうる条件である。爆発にともなう高圧により、鉄管の直径は27㎜から約24mmへと3mm減少した。内部から粉末を取り出してX線回折するとwBN(100)とwBN(002)が、2θが40~45°の範囲で観察され、wBNの合成が確認された。次に、直径80μmのタングステン線に、ダイヤモンド砥粒とwBN合成砥粒を青銅ろう(Cu-15%Sn)で固定してソーワイヤを製作した。この時、これまでの経験から適量の水素化チタン(TiH2)を混合してろう材と砥粒とのぬれ性を最適化する。大きさが4×4×1mmのダイヤモンド単結晶基板に押付け力1N、ワイヤ走行速度100m/sで切削試験を行い, 250μm切断することができた。この時、ダイヤモンド砥粒にwBN粒子が混合された複合砥粒のほうがダイヤモンドの切断効率が良い傾向にある。これは、混合しているwBNがダイヤモンドをスクラッチ(傷付け)しているためと考えている。
3: やや遅れている
研究拠点である秋田大学から、野外実験場のある福島県白河市に移動したいのだが、新型コロナの影響により、県外への移動と爆発合成実験の実施許可が難しい状況のため、苦慮している。現在、コロナ禍以前の予備実験で合成したwBNの解析と切削加工試験を実施している。 爆発合成のための、新たなhBN粉末を封入した鉄管などの準備はできているので、合成実験の再開により遅れは取り戻せるものと考えている。
代表者は、これまで二次汚染の無い蒸気圧破砕剤を用いて、大型コンクリート構造物を高速解体するためのシステムを開発した。解体時に、き裂伝播を制御するための誘導孔を加工する工具が必要である。本研究ではダイヤモンドより硬い超高硬度工具を開発することを目的とする。2020年には、爆発合成したwBNをダイヤモンド砥粒と混ぜることにより、ダイヤモンド砥粒単体よりも切削効率を上げることが確認された。今後、切削効率を上げるために、wBNの合成効率を上げることを検討する。第一に、合成前の出発物質であるhBNの格子欠陥が少なく結晶性の良い粉末ではwBNの合成率が上がることが期待される。結晶性は、X線回折で確認することができる。国産の結晶性の良いhBNを入手したので、この粉体で爆発合成を試みて、性能の良いwBNを得てより切削性能の良い工具を製作することを目指す。
本研究の主体となる爆発合成実験が、物質を飛散させることになるため、新型コロナ禍においては実験を控えている。また、実験場のある福島県白河市と秋田市との移動が難しい状態になっているため、今回は次年度使用額が生じた。今後、新型コロナの罹患者が減少して、実験の再開と研究者の移動が可能になれば、研究経費を有効に使用して、爆発合成実験とダイヤモンド基板の切断試験を実施することができる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Materials and Applications
巻: 10(1) ページ: 43-51
10.32732/jma.2021.10.1.43
International Journal of the Society of Materials Engineering for Resources
巻: Vol.24 ページ: 18-22