研究課題/領域番号 |
20K05163
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 良祐 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (10612400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポーラスアルミニウム / 補修 / ろう付け / アルミニウム合金 / 焼結 |
研究実績の概要 |
本研究ではポーラスアルミニウムの補修技術として,発泡補修を提案し,その有効性を実験的に調べる. ポーラス純アルミニウム直方体(16×16×50 mm3)を作製した.これの長手方向中央の部に,損傷を模擬してφ8の貫通孔を施した.補修用フィラーとして用いるために,Al-12Si系低融点アルミニウム合金製プリカーサを作製し,φ8の円柱に切り出した.この円柱にφ1およびφ4のドリルを用いて,軸方向に平行な貫通孔を施した.ポーラス純アルミニウム直方体の貫通孔にフラックスを塗布した後フィラーを挿入し,これをSUS製金型(内部寸法約16×16×50 mm3)に入れ,873 Kに加熱した電気炉内で20 min保持することでフィラーを発泡させる発泡補修を行った.フィラーとポーラス純アルミニウムの界面近傍のSEM観察およびEDS解析を行った.試験片に対して4点曲げ試験を行い,補修強度を評価した. SEM観察の結果,フィラーとポーラス純アルミニウムの接合部の一部に界面が見られるものの,界面が観察されない部分も存在した.界面が確認されない部分では,EDS解析の結果,Siがフィラーからポーラス純アルミニウムに拡散したことが確認された.フィラーとポーラス純アルミニウムは冶金学的に接合したと考えられる.穴付きフィラーを用いて補修した試験片では,フィラーの穴が完全には埋まらなかったものの,その曲げ強度は,貫通孔を有するポーラス純アルミニウムより強く,貫通孔を施す前のポーラス純アルミニウムと同程度になった. 発泡補修はフィラーと損傷したポーラスアルミニウムが冶金学的に接合することにより,損傷したポーラスアルミニウムの強度を損傷する前と同等の水準に回復させることが可能であることが明らかとなった.フィラーに穿孔を施してフィラーの体積を変化させることで補修部の気孔率制御が可能であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染防止対策で教員および学生が大学に入構できる日数が制限された.コロナ禍に伴う講義のオンライン化等への対応により,研究時間が十分に確保できなかった. スポットヒーティング装置のトーチを輸送するCNCシステムは,当該年度の別研究で開発する技術をそのまま用いる予定であったが,CNCシステムの開発はできたものの,スポットヒーティング装置の開発まで実施することができなかった.スポットヒーティング装置開発が困難になったため,後に実施予定であった補修部の気孔率制御を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究計画に戻り,スポットヒーティング装置の作製する.スポットヒータートーチ輸送用CNCシステムの基礎の設計は当該年度にできている.今後は,スポットヒーターのデモ機をレンタルし,プリカーサの発泡が可能か検証を行う.その後,トーチ輸送システムを含むスポットヒーティング装置を作製し,局所加熱による発泡補修を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
スポットヒーティングによる局所加熱による発泡補修を予定していたが,コロナ蔓延防止対応等により,スポットヒーティング装置が完成しなかった.このため,装置の購入・開発に用いる費用が残った.スポットヒーティング装置の作製を進め,引き続き局所加熱による発泡補修に関する研究を遂行する.
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