液中プラズマCVD法を用いた,非移行式の10kW液中プラズマジェット加工装置を設計・製作した。設計当初のプラズマジェットノズルは,電極(リング状陽極)の損傷が激しく,磁場を用いた回転アークプラズマ発生電極に設計変更を行い,プラズマ発生実験を行った。磁場は,ネオジム(Nd)永久磁石の同心状アレイにより実現し,電極中心線からの距離と配置数を変更して実験を行った。本装置において,安定した磁気回転アークジェットを得るために最適な磁束密度の大きさは4-6[mT]であった.製作した磁場を用いた回転アークプラズマ発生電極を用いて,ダイヤモンド合成を試みた。プラズマの安定度は飛躍的に向上していたが,プラズマの温度が高く(10000℃程度)基板の温度勾配が激しくなるため,これまでのノズル取り付け型の基板ホルダーに変えて,基板距離の精密調整が可能なマイクロメータによる調節機構を備えた新しい基板ホルダーを製作し実験を続行した。これまでのSi基板,ステンレス鋼基板に変えて,急激な熱変化に強くダイヤモンド合成の実績があるタングステン基板を用いて,ダイヤモンド合成実験を行った。アークプラズマは,磁場により安定しているが,温度勾配が激しいため,基板温度コントロールを0.1mm単位で精密に行った。本装置の改良により昨年までの課題であった基板温度のコントロールが安定にできるようになり,10分以上基板温度をダイヤモンド合成に最適な700℃±25℃に保つことができるようになった。結晶性の炭素物質が安定に合成できることはわかったが,ダイヤモンド結晶はまだ合成不可能であった。コロナ禍のため実験が遅れてしまったが,今後,実験を継続して,高速ダイヤモンド合成を可能にし,特許にもあるように電極材料を添加した,半導体ダイヤモンド合成を可能にする。
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