研究課題/領域番号 |
20K05179
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 健作 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40634564)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 融液成長 / 固液界面 / 結晶粒界 / 双晶界面 / シリコン / ホウ酸塩結晶 |
研究実績の概要 |
本研究では、多結晶材料が融液から凝固する際に形成される結晶粒界の形成機構を系統的に解明することを目的とした。太陽電池材料に用いられる多結晶シリコン中には、融液から凝固する際に偶発的に形成される結晶粒界が多く含まれている。産業スケールの多結晶シリコンインゴットは数百キログラム程度あり、様々な方位関係の結晶粒界が形成されている。観察窓を設けたその場観察装置を用いることで結晶粒界が形成される様子を知ることができるが、実験室スケールのその場観察装置では観察視野が狭いので効率よく結晶粒界が形成される様子を観察することはできない。 以前の研究において、ホウ酸塩結晶の双晶形成を制御することで、従来作製不可能と考えられてきた特性を有する光学デバイスの実現に取り組んだ。この実験装置では、結晶粒界を有する結晶を局所的に融解して結晶成長を制御しながら、その場観察することが可能である。本研究ではこの研究アプローチ手法を半導体シリコンへ応用して、結晶粒界の形成機構の解明に取り組む。半導体シリコンは立方晶系に属するが、ホウ酸塩結晶の四ホウ酸リチウムは正方晶系に属する。この違いを比較することで、系統的な結晶粒界形成機構についても考察する。 本研究は3カ年計画であり、「その場観察装置の改造」「成長方位の連続的な変化」「成長界面の曲率操作」に取り組む。半導体シリコンの融点は約1400℃と高温なので、「その場観察装置の改造」が本研究で一番困難である。初年度は、この装置の改造に取り組んだ。また、従来装置を用いて、半導体シリコンやホウ酸塩結晶の粒界形成に関する成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3カ年計画であり、1年目である本年度は実験装置の改造に取り組んだが、駆動系の導入が残っている。また、従来装置を用いて「平行でない双晶界面によるデンドライト成長」と「ホウ酸塩結晶の周期双晶の微細化」といった結晶粒界形成に関する成果を得た。これらの成果は装置の改造後に研究を進展する際に重要になる。
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今後の研究の推進方策 |
その場観察装置の改造を進め、下記の従来装置におけるこれまでの実験成果を発展させる。 「平行でない双晶界面によるデンドライト成長」 シリコンのファセットデンドライトの中心には、通常、平行な2つの双晶界面を有する。本研究では、偶然形成された平行でない双晶界面でもデンドライト成長することを明らかにした。これまでの実験方法では偶然形成された双晶が成長する様子を観察していたが、本研究で提案する実験方法では結晶粒界や成長界面を自ら制御することができるので、平行でない双晶界面を意図的に形成させ、その結晶成長機構を調査することができる。 「ホウ酸塩結晶の周期双晶の微細化」 強誘電体結晶は自発分極を周期的に反転させることで、レーザー光の波長変換に用いる周期分極反転デバイスを作製することができる。このデバイスは反転回数を繰り返すほど、波長変換効率が向上する。四ホウ酸リチウムは常誘電体であり、強誘電体の様に分極反転できないが、双晶を繰り返し形成させることで周期反転デバイスを作製できる。本研究では新たな周期構造作製方法を実現して、従来の100μm間隔よりも微細な60μm間隔の周期双晶を作製した。この技術を半導体シリコンや他の結晶へ応用することで多結晶組織を制御した結晶材料の実現に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
その場観察装置の改造において、駆動系(約60万円)を現状に沿ったものに変更するために保留している。成果発表のための旅費が未使用である。これからは国内外でオンライン講演会が開催されるので、参加費は必要であるが旅費や移動時間を節約して多くの発表機会が得られると予測している。
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