申請者らが見出したレーザ照射で形成される金属の表面微細構造上の特異拡張濡れを利用し、溶解・化合物形成を伴う反応濡れ(reactive wetting)を定量的に評価する新手法の構築、メカニズムの解明を目指した。 最終年度において、温度の上昇とともに濡れ性が良くなり、特異拡張濡れの速度が増加することが分かった。一方で、溶解する系では表面微細構造が消滅したことに起因すると考えられる特異拡張濡れの速度の低下が確認された。また、表面微細クレバス構造を壁面の一部がある開管角で開いた円管であるとモデル化し、新たな毛細管の速度式を導出した。導出した浸透速度式により、基板試料と化合物形成反応を生じない溶融金属の特異拡張濡れの速度、化合物形成反応が特異拡張濡れに与える影響を評価した。 研究期間全体を通じて、以下の知見を得た。 (1)直線経路状の表面微細クレバス構造上における溶融金属の特異拡張濡れを、濡れ速度から定量的に評価することに成功した。金属種間で比較すると、SnとInの濡れ速度が大きく、Pb、Biと続いた。(2)溶融金属と基板試料間の接触角が小さく、化合物形成反応を生じる系の場合、濡れ速度が大きくなる傾向にあることがわかった。また、Biは特異拡張濡れ中の表面微細クレバス構造の変化の影響を受け、他の金属とは異なり等速運動を示した。(3)本研究で導出した浸透速度式により、基板試料と化合物形成反応を生じない溶融金属の特異拡張濡れの速度を記述することに成功した。相対的な評価に留まるが、化合物形成反応が特異拡張濡れに与える影響を評価することができた。
|