研究課題/領域番号 |
20K05185
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平井 信充 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50294020)
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研究分担者 |
兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 特命教授 (10185952)
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオフィルム / ぬめり / 走査型プローブ顕微鏡 / 走査型イオン伝導顕微鏡 / 細胞外重合物質 / 微生物 / 鉄鋼材料 / 鉄鋼スラグ |
研究実績の概要 |
基盤研究C「バイオフィルム生成超初期過程の走査型イオン伝導顕微鏡その場観察」において我々が確立した「走査型イオン伝導顕微鏡によるバイオフィルム観察」は、当初透明試料上でのみが観察可能であり、非透明試料の観察は位置合わせ等の問題があり困難であった。そこで、今年度は、従来装置の一部最適化を行い、非透明試料でも観察可能な走査型イオン伝導顕微鏡システムを構築し、非透明試料上に形成したバイオフィルムの水中その場観察を試みた。 その結果、各種透明ないし非透明プラスチック上、具体的には、フッ素樹脂上、アクリル上、ABS上、ポリエチレン上、塩化ビニル上、ポリスチレン上に、海洋性ビブリオ菌(Aliivibrio Fisheri:JCM18803, 理研より購入)を用いて作製したバイオフィルムについて、走査型イオン伝導顕微鏡を用いて水中で海洋菌バイオフィルムの形態観察を行うことに成功した。 なお、走査型イオン伝導顕微鏡観察に用いる海洋菌バイオフィルムは以下の手順で作製した。マリン寒天培地から海洋菌をニクロムループで1コロニーから釣菌し、培養液50 mlを用いて菌液を作製し、大気雰囲気下培養器中(設定温度22 ℃)で48 h静置培養した。この菌液を生理食塩水にて希釈したのち、底面に各種プラスチックを固定したポリスチレン製シャーレに入れて大気雰囲気下培養器中(設定温度22℃)で一定時間静置培養し、ポリスチレン製シャーレ内面にバイオフィルムを形成した。その後、固定化処理を行った後、走査型イオン伝導顕微鏡に導入し生理食塩水において各種プラスチック上で表面観察を行った。 合わせて、アルギン酸ナトリウムやアミノ酸を溶解した水溶液を模擬バイオフィルム溶液とし、模擬バイオフィルム溶液と上記プラスチックの濡れ挙動(付着仕事や滑落挙動)等についてもあわせて評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が確立してきた走査型イオン伝導顕微鏡によるバイオフィルム観察は、透明試料のみが観察可能であったが、今回装置の一部改良を行い、現在、各種非透明プラスチック上に海洋性ビブリオ菌を用いて作製したバイオフィルムについて、走査型イオン伝導顕微鏡を用いて水中で形態観察を行うところまで成功している。近々、令和3年度での目標であった鉄鋼スラグ上での観察に取り掛かる予定である。コロナウィルスの蔓延により出張などが制限される中で、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に得られた成果については今年度(令和3年度)内に論文に執筆予定である。また、海洋性ビブリオ菌を用いて作製したバイオフィルムについて、鉄鋼スラグ上での走査型イオン伝導顕微鏡水中その場観察に取り掛かる予定である。観察に供する鉄鋼スラグとしては、鉄鋼メーカーから提供頂いた3種類の実製鋼スラグを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスのため、学外発表等が対面での発表からオンライン発表に変更されることが何度かあり予定より出張の機会が減ったため等により、次年度使用額が生じた。なお、研究自体は極めて順調に進んでおり、より研究を強力に推進するために、バイオフィルム形成用基板やバイオフィルム形成に必要な菌や培地が当初の予定以上に必要であるため、生じた次年度使用額はこれらの費用に充当することにより、より強力に研究を推進していく予定である。
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