研究課題
基盤研究C「バイオフィルム生成超初期過程の走査型イオン伝導顕微鏡その場観察」において我々が確立した「走査型イオン伝導顕微鏡によるバイオフィルム観察」は、当初透明試料上でのみが観察可能であり、非透明試料の観察は位置合わせ等の問題があり困難であった。そこで一昨年度(1年目)は、従来装置の一部最適化を行い、非透明試料でも観察可能な走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)システムを構築し、非透明試料上に形成したバイオフィルムの水中その場観察を試み、その結果、各種透明ないし非透明プラスチック上に海洋性ビブリオ菌(Aliivibrio Fisheri:JCM18803, 理研より購入)を用いて作製したバイオフィルムについて、SICMを用いて水中で海洋菌バイオフィルムの形態観察を行うことに成功した。また、昨年度(2年目)は、鉄鋼スラグ上に海洋性ビブリオ菌を用いて作製したバイオフィルムについて、SICMを用いて水中で形態観察を行ったところ、形態のナノスケール観察に成功した。そこで、本年度は、昨年度までに完成した観察手法を用いて、バイオフィルム生成挙動の研究、具体的には、生成能の基板種や基板処理等の依存性について、観察結果と合わせて検討を行った。なお、SICM観察に用いる海洋菌バイオフィルムは以下の手順で作製した。マリン寒天培地から海洋菌をニクロムループで1コロニーから釣菌し、培養液50 mlを用いて菌液を作製し、大気雰囲気下培養器中(設定温度22 ℃)で48 h静置培養した。この菌液を生理食塩水にて希釈したのち、底面に各種プラスチックを固定したポリスチレン製シャーレに入れて大気雰囲気下培養器中(設定温度22℃)で一定時間静置培養し、ポリスチレン製シャーレ内面にバイオフィルムを形成した。その後、固定化処理を行った後、SICMに導入し生理食塩水において各種鉄鋼スラグ上で表面観察を行った。
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