研究課題/領域番号 |
20K05188
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
レンゴロ ウレット 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10304403)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微粒子 / 液滴 / 表面 / 蒸発 / 沈着 / 脱離 / 疎水性 / 超音波洗浄 |
研究実績の概要 |
環境と食料生産とを両立させるには、肥料(要素)の供給を抑制することが求められている。しかし、肥料の投入方法の高度化に関する研究はほとんど行われておらず、投入量の散布効率向上に関する研究は遅れている。本応募研究では、肥料の微粒化を行い、その微粒子のキャリアとして液滴群を用いることで、肥料が植物に選択的に沈着される散布システムの開発を行う。高い選択性と沈着力を持つ散布システムの開発と育成実験に基づく評価により、植物の成長を促進しつつ、吸収されない肥料成分を最小化する食料生産体系の構築を目指す。 2021年度では、【研究1】植物表面をモデル化した基板に沈着した微粒子を脱離(剥離)させるための技術の開発、【研究2】気中における液滴および微粒子の挙動およびその沈着率に影響が大きいと考えられる、地面(土壌)からの水蒸発の制御に関する研究、について検討を行った。 【研究1】高精度な化学分析は液相を用いる手法が多く、微粒子が沈着した固体表面を液体へ導入させて、微粒子の脱離を行うことが一般的であるが、固体表面上に沈着したsub-micron粒子を高い効率で剥離させることが難しい課題とされてきた。本研究では低出力の超音波洗浄機の水系サンプルに「不活性」物質である(sub-micron)スス粒子を混入させることで、沈着された目的のsub-micron粒子の脱離が容易になった。使用したスス粒子はロウソクの燃焼で得られたもので、数週間や数か月において水中に安定した分散性を示しており、研究室内で偶然に発見した珍しい現象(物質)であった。 【研究2】水の蒸発を抑制するために一般的にプラスチックシートが使われているが、本研究では、天然の粘土質土壌試料にシランカップリング剤系コーティングを適用し、土壌の疎水性を高めることができた。蒸発フラックスの大きさは、土壌層内に疎水性処理土層を置くことにより調整できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、当初は対象表面(葉など)に対して、気中からの微粒化および液滴群の沈着効率を調べることが主な目的であった。高精度な分析は液相を用いる手法が多いことから、微粒子が沈着された固体表面から、分析したい微粒子を液体へ導入する必要があった。しかし固体表面上に沈着したsub-micron粒子を高い効率で脱離させることが難しい課題とされてきた。本研究では新たに脱離技術を開発することができて、微粒子の分析が比較的に容易に行うことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度から行っている複数の元素(CaやPなど)の溶解性の評価法について引き続き検討を行う。モデル表面ならびに実際の植物表面における気中からの微粒子および液滴群の沈着についても検討を行うが、モデル表面においては、他の研究室と連携しながら疎水性および親水性を有する構造体の製作を行う。植物としては主にトマトを用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にパンデミックによる感染拡大を防ぐために研究室・実験室内の出入りを制御していたため、実験の回数も大幅に減り、必要な物品費・消耗品の購入および分析費(その他)ならびに旅費は予定通りに実施できなかった。 最終年度2022年度には実際の植物を用いて実験を行う予定であり、植物の育成チャンバーならびに微粒子を分析するために経費が必要となる。また欧州(スペイン)で開催される国際会議にて本研究の成果を発表する予定も考えている。
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