研究課題/領域番号 |
20K05192
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神田 英輝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90371624)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液化ジメチルエーテル / 溶媒 / 抽出 / DNA / 脱細胞化 / リポソーム |
研究実績の概要 |
超臨界二酸化炭素(SC-CO2)に液体の助溶媒(エントレーナー)を混合して、SC-CO2による抽出量を増大させたり、SC-CO2に不溶な極性物質を抽出可能にする手法は古くから研究されているが、抽出物や残渣にエントレーナーが残留する、エントレーナーの種類によっては作業環境中の空気が汚染される、SC-CO2へのエントレーナーの溶解度が低い場合は極性物質の抽出に限界があるといった問題がある。一方で近年グリーン溶媒として注目されている液化ジメチルエーテル(DME)は沸点が-24.8℃なので残留の懸念が無く毒性が僅かで安価で微極性という多くの利点がある。昨年までに大豆脂質に対して、DME/SC-CO2混合系での中性脂質の抽出を試み、DMEによる抽出促進効果や操作圧力低減効果が確認された。 そこで液化DMEの高い抽出特性を更なる応用として、液化DMEにリン脂質を混合して水中に注入することによりリポソーム作成を試みた。液化DMEを媒体に作成されたリポソームは多層構造であり、また従来のジエチルエーテルよりもリポソーム水溶液への残留量が著しく低下した。ただしDMEは低い温度で激しく揮発するので、局所的に水温が低下してリン脂質の柔軟性が低下したため、リポソームは30℃の水温では得られず、45℃以上に限って得られた。 またダチョウ頸動脈やブタ脳やブタ軟骨やブタ大動脈から液化DMEとDNaseを併用してDNAを抽出除去するスキャホールド作成も試み、全てのサンプルにおいてスキャフォールド作成に成功した。DMEはDNAを直接抽出できないものの、DNaseによるDNA断片化の妨げになる脂質の除去に極めて有効な媒体であり残留もしないこともGC/MSにより確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年実施したSC-CO2/DME溶媒による脂質抽出のみならず、DMEの高い脂質溶解性に着目したリポソーム作成といった応用展開や、DNA除去による動物組織の脱細胞化によるスキャホールド作成といった産業応用も実施し、当初の目論見以上の展開が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
既に初期の目的を達成し、加えて応用研究も実施できたが、ハンセン溶解度パラメータなどの理論的検討や詳細なメカニズムに不明な点が多いので、このような理論的な検討にも着手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により開催される予定であった学会が中止になったり、オンライン開催となり、当初の予定よりも旅費への支出が減少した。新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のために、実験室の人員数をコロナ禍前より半減させる必要が生じた。このため当初予定していた実験による検討以外にも、ハンセン溶解度パラメータによる理論検討を導入しており、実験回数が減少している。ただしそれでも査読付き論文は6報発表できている。2022年度はコロナ禍の影響が和らぐことが期待でき、再び実験を加速したいと計画しており、このために次年度使用額が生じている。
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