超臨界二酸化炭素(SC-CO2)に液体の助溶媒(エントレーナー)を混合して、SC-CO2による抽出量を増大させたり、SC-CO2に不溶な極性物質を抽出可能にする手法は古くから研究されているが、抽出物や残渣にエントレーナーが残留する、エントレーナーの種類によっては作業環境中の空気が汚染される、SC-CO2へのエントレーナーの溶解度が低い場合は極性物質の抽出に限界があるといった問題がある。一方で近年グリーン溶媒として注目されている液化ジメチルエーテル(DME)は沸点が-24.8℃なので残留の懸念が無く毒性が僅かで安価で微極性という多くの利点がある。まず大豆脂質に対して、DME/SC-CO2混合系での中性脂質の抽出を試み、DMEによる抽出促進効果や操作圧力低減効果が確認された。また液化DMEの高い抽出特性を更に応用する試みとして、液化DMEにリン脂質を混合して水中に注入することによりリポソーム作製を試みた。液化DMEを媒体に作成されたリポソームは多層構造であり、また従来のジエチルエーテルよりもリポソーム水溶液への残留量が著しく低下した。ただしDMEは低い温度で激しく揮発するので、局所的に水温が低下してリン脂質の柔軟性が低下したため、リポソームは30℃の水温では得られず、45℃以上に限って得られた。現在は液化DMEとSC-CO2の混合媒体を用いたリポソーム作製を試みている。またダチョウ頸動脈やブタ脳やブタ軟骨やブタ大動脈から液化DMEとDNaseを併用してDNAを抽出除去するスキャホールド作成も試み、全てのサンプルにおいてスキャフォールド作成に成功した。この他、ウコンからのクルクミン抽出、微細藻類からの脂質抽出にもSC-CO2と液化DMEの混合溶媒を適用し、DME添加による操作圧力の低減効果や抽出促進効果が確認された。
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