研究課題/領域番号 |
20K05193
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柳下 宏 広島大学, 学術・社会連携室, 教授 (40358213)
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研究分担者 |
都留 稔了 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (20201642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分離膜 / layered hybrid構造膜 / 浸透気化法 / オルガノシリカ |
研究実績の概要 |
一般的なセラミック多孔膜は,セラミック支持体上に中間層,分離層からなる多層構造で形成されるが,支持体の膜厚は厚く,コストの大半を占めているといわれている。本研究では,耐熱性を有する高分子多孔性基材上に,高選択性・高透過性を有する無機分離層を超薄膜で製膜することにより,層状に膜材料がハイブリッドなlayered hybrid構造を有する分離膜を作製する製膜法の確立と,作製した分離膜を今後利用が拡大すると考えられる各種分離系へ応用することを本研究の目的とする。 2020年度では,高分子基材として,市販有機子分子膜であるポリスルホン系ナノろ過膜を用い,選択透過性に優れる1,2-bis-(triethoxysilyl)ethane (BTESE)および金属イオンドープすることでイオン架橋させ,ネットワーク細孔径制御の可能性を検討し,アルコール水溶液の蒸気透過(VP) 脱水に応用した。 2021年度ではハイブリッド材料として,多孔質基材としてポリエーテルスルホン(推算細孔径: 0.22 μm),セルロースエステル(推算細孔径: 0.1 μm),ポリテトラフルオロエチレン(推算細孔径: 0.2 μm)の三種を用い,分離層として酸化グラフェンをコーティングすることで製膜を行なった。さらに,25℃における飽和水蒸気/窒素混合系における水蒸気透過実験を行ない,高い水蒸気透過率と高い分離選択性を示すことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化グラフェン/ポリエーテルスルホン,酸化グラフェン/セルロースエステルおよび酸化グラフェン/ ポリテトラフルオロエチレン膜は,濾過法およびキャスト法に2通りの手法で製膜した。透過特性評価として25℃飽和水蒸気/窒素の透過実験を行ったところ,いずれの基材を用いた場合でも水透過率は1.0×10-6 mol/(m2 s Pa)以上,水蒸気透過率は1000以上を示し,高透過および高選択性を有する酸化グラフェン膜が形成されたことが確認された。酸化グラフェンコーティング量の少ない場合は濾過製膜,高い場合はキャスト製膜が適しており,濾過製膜の方がより薄膜製膜が可能であることが示された。水透過率に着目すると,酸化グラフェン量の増加に伴い,水透過率が低下する傾向が見られた。これは,厚膜化により酸化グラフェン分離層における透過抵抗が増大し,より水蒸気が透過し難くなったためと考えられる。FE-SEMによる膜断面の観察からも,ポリエーテルスルホン基材上に濾過製膜によって,酸化グラフェン分離層厚み100 nm程度の薄膜酸化グラフェン層が製膜できたことが確認された。
なお、以下の論文を発表した。 Controlled organosilica networks via metal doping for improved dehydration membranes with layered hybrid structures
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き,高分子多孔質基材上に,高選択性・高透過性を有する無機分離層を有するlayered hybrid構造膜の製膜を行う。特に,無機層としては酸化グラフェンに着目し酸化グラフェンへのイオンドープの最適化と,各種成分の透過特性への影響を明らかにする。透過特性としては,水蒸気透過のみならず,有機水溶液の蒸気透過特性などへの展開を図る。さらに,高分子であるナノ多孔性支持体と無機材質による分離活性層との界面状の解析として,レーザー顕微鏡,走査型電子顕微鏡,X線結晶構造解析XRD,X線光電分光法XPS,赤外分光分析ATR-FTIR等で分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナウィルスの影響で、学会への参加等、旅費の使用が出来なかったことにより、次年度に使用額を繰り越すことになった。 次年度は、コロナウィルスの影響によるが、研究成果の公表を積極的に行っていきたい。
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