研究実績の概要 |
一般的なセラミック多孔膜は,セラミック支持体上に中間層,分離層からなる多層構造で形成されるが,支持体の膜厚は厚く,コストの大半を占めているといわれている。本研究では,耐熱性を有する高分子多孔性基材上に,高選択性・高透過性を有するる無機分離層を超薄膜で製膜することにより,層状に膜材料がハイブリッドなlayered hybrid構造を有する分離膜を作製する製膜法の確立と,作製した分離膜を今後利用が拡大すると考えられる各種分離系へ応用することを本研究の目的とする。
これまでに,高分子基材として,市販有機子分子膜であるポリスルホン系ナノろ過膜を用い,選択透過性に優れる1,2-bis-(triethoxysilyl)ethane (BTESE)および金属イオンドープすることでイオン架橋させ,ネットワーク細孔径制御の可能性を検討し,アルコール水溶液の蒸気透過(VP) 脱水に応用した。さらに,多孔質基材へ分離層として酸化グラフェンをコーティングすることで製膜を行ない,飽和水蒸気/窒素混合系における水蒸気透過実験を行ない,高い水蒸気透過率と高い分離選択性を示すことを明らかとしている。
2022年度(最終年度)では新規膜材料として,1次元材料としてセルロースナノファイバーを高分子多孔質支持体として市販セルロースアセテート精密ろ過膜(CA,推算細孔径 0.2μm)をもちい,CNFをキャスト法により,CNF/CA膜が製膜可能であることを明らかとした。さらに,80℃飽和水蒸気/窒素において経時変化を測定した結果,水蒸気透過率1.6×10-6 mol/(m2・s・Pa),窒素透過率3.3×10-9 mol/(m2・s・Pa)を,8h以上にわたって安定した透過率を示した。また,透過率比は490と優れた水蒸気選択透過性を示した。
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