研究課題/領域番号 |
20K05196
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
馬渡 佳秀 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (70380722)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流動層 / 機械的振動 / 微粉体ハンドリング / 凝集体 / 対流現象 |
研究実績の概要 |
本研究では微粉体層の振動場におけるガス流動化状態をより正確に予測もしくは評価する手法を構築することを目的の一つに挙げている。本年度では画像解析による粉体層のフローパターンの数値化による指標化と粉体層のガス透過時の圧力損失および平均空隙率の関係との対応関係を併せ,振動場とガス流れ場の併用による微粉体の流動化機構について検討した。 デジタルビデオカメラ等による挙動観察では,ガス通気量が小さい範囲ではおおむねガスチャネルが常在化する静的なフローパターンが得られたが,振動振幅の増加と共に徐々に連続的にガスチャネルが破壊再生する動的な流動状態に遷移することがわかった。このことは,画像解析による輝度値の標準偏差の時間変動特性からも十分に探索することが可能であることが確認できた。また,振動振幅が大きくなることで凝集体の破壊が進行する一方で,粉体層全体の振動伝播由来の圧密が同時に進行し,粉体層の流動化状態の活性化は静的なフローパターンに遷移することが可視化による観察結果から得られた。この結果は過去の研究代表者により部分的に見出された結果を再現しており,今回の画像解析による輝度値の変動特性による評価においても構造破壊を伴うことによる輝度値変動の程度が減少していることで示された。これらの成果により,層内のフローパターンの変化を定量的に表現・分類する手法提案の可能性が得られたが,ガス流れ・振動の併用場における諸現象の全体像を把握するために異なる粒子物性での検証が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<フローパターンの可視化と流動化特性との対応関係の検証> ガス流れと機械的振動の併用場における付着・凝集性粉体の流動化状態を可視化し流動化様式を定量化することを試みた。目視観察により粉体層の流動化様式は供給するガス流速と振動条件の組み合わせにより主に動的な挙動を伴うパターンと静的な状態が支配的となるパターンに分類した。ガス供給のみ,もしくは小さな振動振幅を粉体層に与えた場合,粉体層に比較的大きな亀裂(クラック)が形成し,その後は変化なく常在化する静的なフローパターンが観察された。一方,振動振幅を増加させると生成されたクラックが連続的に破壊と再生を繰り返すような動的なフローパターンに状態が遷移した。この時,粉体層のデジタル画像を時間発展的に解析し,解析エリア内の輝度分布標準偏差の変動係数を取ることでクラックの形成・破壊サイクルの程度と頻度を定量的に表現した。結果的に目視観察で動的なフローパターンとして評価したフローパターンの分類にガス通気と振動伝播による構造破壊の程度を新たに加味することが可能となり,微粉体層のガス流れ・振動の併用による流動化改善効果を指標化することでより適切なハンドリング条件を提案できる可能性が拡がった。さらに,粉体層の圧力損失曲線および空隙率曲線を取得しフローパターンの画像解析結果との対応関係について検証した。特に圧力損失の変動特性は粉体層内の空隙変動と密接に関与していることを考慮すると,画像解析による輝度地変動特性はすなわちガス流れ・振動伝播による空間変動特性との関連性が高きものと予想される。現在両者の対応関係を統計的に調査している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
<対流状態の工学的応用> 微粉体ハンドリングの問題点の一つに再現性があるが,これは微粉体が形成する凝集体のサイズや形状およびそれらの積層構造の不均一性に起因する。対流状態は加振場における振動伝播により粒子運動が誘起される現象であるが,ガス通気と加振条件を調整することで微粉体層へ対流現象を誘導し,構造的な不均一性を解消することでハンドリング時の再現性を高めることを目的とする。現在,対流状態の発生条件と凝集体の移動状態を観察し,フローパターンや流動化特性に及ぼす影響を実験的に検討している。なお,装置を改造することにより局所の圧力損失の変動を測定・評価し,フローパターンの画像解析の探索スケールとの整合性を高め,両者の相関性の精度を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
微粉体のガス流れ・振動の併用場における流動状態を指標化するために更に異なる粒子材料について調査する必要があること,また,実際の工業プロセスで最も取得容易な圧力損失の変動特性について,粉体層全体の変動ではなく局所の変動特性を取得してフローパターンの指標化の精度を高める調査を更に進める。使用計画として,局所の圧力損失を取得できるセンサーおよび装置改良に使用する。また,昨年度参加できなかった粉体工学・流動層工学の国際学会へ参加・発表し,当該分野のエキスパートと意見交換するために使用する。
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