本研究は申請者により発見された、サブミクロン粒子懸濁液の超音波噴流内において、超音波で発生された霧よりもはるかに高い粒子分離度と濃縮度が得られた事実に基づき、超音波照射下での液中気泡群による粒子サイズ認識メカニズムを解明して分離粒子径の制御手法を開発することと、濃縮に適した噴流からの標的粒子濃縮物の回収法を確立し、超音波による微粒子分離技術の学術基盤を構築することを目的とする。 令和2年度には実験装置として、1~3 MHzの超音波振動子を備え、100 mLの粒子分散液に超音波を照射して噴流を発生させる槽を試作した。粒子径が100 nmと300 nmのシリカ粒子混合物試料に所定周波数および電力で超音波を照射して生じた噴流から採取した試料分析し、100 nm粒子の分離度と濃縮比を調査した。2.5 MHzの照射で得られた噴流中で100 nm粒子の濃縮を確認した。令和3年度には試料溶液中にアルゴンとキセノンを溶解させて分離挙動を調査し、キセノンでは100 nm粒子の濃縮度は最大6に達し、アルゴン飽和試料では最大2.3であった。試料溶液を脱気したところ100 nm粒子は全く濃縮せず、噴流中での粒子の局在化には溶存気体量が大きいことが必要であることがわかった。令和4年度には噴流の様々な位置で100 nm粒子濃縮を調査し、噴流頂上部で著しい分離が発現していることを見出した。高速度ビデオ映像での観察から頂上部では液塊が噴流からちぎれる際にキャビテーションによりミストの噴出が生じ、その後の液塊中で粒子の局在化が生じていることがわかった。連続的な分離操作の実現にはちぎれた液塊を取り出すことが重要であるとの手がかりを得た。
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