令和5年度は、刺激応答性スラリーの調製条件最適化および、最適条件で調製した刺激応答性スラリーを用いてシート成形に取り組んだ。 昨年度までの成果で、水中での粒子表面の帯電状況に対応して適切に前処理を行った高分子電解質および軟凝集化添加剤を使用することで、正負いずれに対応する粒子を用いても刺激応答性スラリーの調製に成功した。今年度は刺激応答性スラリーを用いたフレキシブルシートのバインダレス成形に取り組むため、試料粉体としてシート成形の原料として使用されることの多いチタン酸バリウムを採用した。分散剤には、カチオン系高分子電解質であるポリエチレンイミンを用い、粒子が十分に負帯電し、ポリエチレンイミンが十分に正帯電する条件で回分重力沈降試験、粘度測定および全有機炭素量測定法により分散剤の最適添加量の調査を行った。次に様々な軟凝集化添加剤を用いて調製条件の最適化に取り組んだ。その後,最適条件で調製した刺激応答性スラリーを用いて一般的なドクターブレードとPETフィルムでシート成形を行った。その結果、シートの前処理や追加でバインダー添加等の特別な操作を行うことなくシートを成形することができ、得られたシートは高い柔軟性を有していた。また、得られたシートは厚さ、充填率ともに高い均質性を有していることに加え、従来から用いられている良分散スラリーにバインダー等の添加剤を用いる方法で成形したシートよりも高充填率であった。以上の結果から、本研究が目的としている刺激応答性スラリーを応用したフレキシブルシートのバインダーレス成形技術の確立に成功し、開発した手法の有用性を確認することができた。
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