研究課題/領域番号 |
20K05201
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松田 弘幸 日本大学, 理工学部, 教授 (50339256)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 溶解度 / 難水溶性薬物 / 生体活性成分 / 推算モデル |
研究実績の概要 |
本研究ではまず,昨年度に引き続き,難水溶性薬物+助可溶化剤 複合化合物の水中における溶解度の推算モデルの構築に必要な溶解度データを得るために,クマリン誘導体である4-ヒドロキシクマリンの種々のアルコール中の溶解度測定をsynthetic法を用いて広い温度範囲で行い,アルコールの炭素数の変化に伴う溶解度の挙動の変化について考察した.これまでに測定を行ったアルコール中における溶解度データとあわせて,溶解度推算モデル構築のための基礎データとなる. 上記溶解度推算モデルの構築について,推算において必須の物性値であるシクロデキストリン(CD)類の融解熱に着目した.昨年度は融解熱をCD類の分子量の関数として表現したが,今年度はグループ寄与法の考え方を導入した.これにより,種々のCD類に対して融解熱の表現が可能となった.この融解熱の表現法を昨年度までに構築した溶解度推算モデルに適用する. 最後に,上記溶解度推算モデルの推算精度の評価に必要な難水溶性薬物+助可溶化剤 複合化合物の水中における溶解度の蓄積を目的として,今年度は難水溶性生体活性成分に抗酸化・抗炎症・抗菌・抗潰瘍などの生物活性を持つフラボカワイン A(FKA)を,助可溶化剤にはβ-CDおよびその誘導体である2-HP-β-CD,G2-β-CDを選択し,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて溶解度測定を行い,助可溶化剤の種類およびその添加量に伴うFKAの溶解度向上を定量的に把握した.次年度は,本研究で検討している溶解度推算モデルが今年度測定した上記の溶解度の実測値を良好に再現できるかの検討を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難水溶性薬物+助可溶化剤 複合化合物の水中における溶解度については,今年度から新規の難水溶性薬物であるフラボカワインAを対象に着手した.来年度は助可溶化剤としてCD類のみならず,当初計画していたイオン液体にも着手できる予定である. 難水溶性薬物+助可溶化剤 複合化合物の水中における溶解度の推算モデルの構築においては,当初の計画ではCD類・イオン液体をβ-CD,カチオン([CnMIM]+など),アニオン([C8SO4]-, [Ala]-, [Gly]-など),官能基および炭化水素基 (CH3, OH, OCH3など) のグループ集合体ととらえる考え方(グループ寄与法)の適用を予定していた.活量係数式による溶解度推算モデルの構築は実現しているが,CD類やイオン液体の構造が複雑であることから,分子構造のみから溶解度が推算可能な状況には至っていない.しかし,全体を通してはおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,構築した溶解度の推算モデルによる結果に基づき少量の添加量で目的の薬物の水溶性を満たす助可溶化剤の分子構造の探索を行い,その分子構造の助可溶化剤の作製を試みる予定であった.しかし,分子構造のみからの溶解度の推算モデルの構築が遅れている.一方,CD類については,申請者の研究室でこれまで種々のCD類を対象に溶解度測定を行ったときと同様の傾向が得られている.これらの結果を活用して,今年度から難水溶性薬物として選択しているフラボカワインAについても溶解度測定を進める.イオン液体ではカチオンとアニオンの組み合わせやカチオンの側鎖の鎖長の探索を溶解度を精密に測定することにより行う. 難水溶性薬物+助可溶化剤複合化合物の水中における溶解度の推算モデルの構築において,現状のモデルの問題点は,Wilson式中の2成分系パラメータに3成分系溶解度データを用いることである.3成分系溶解度データを用いずに溶解度の推算モデルの構築が可能であるか,検討を行う.その後,グループ寄与法であるASOGの適用を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
溶解度測定に使用する助可溶化剤において,今年度は当初予定ではCD1類およびイオン液体を対象としていたが,CD類のみでの測定となったため,消耗品費において残額が生じた.次年度は,次年度使用額を使用して,薬品類(難水溶性薬物,CD類,イオン液体およびその原料,有機溶媒)および装置消耗品(HPLCカラム,ガラス器具等)を購入する予定である.
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