研究課題/領域番号 |
20K05203
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
田中 伸幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター, 研究職 (10391294)
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研究分担者 |
澤田 真一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (70414571)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水素製造法ISプロセス / カチオン交換膜 / イオン飛跡グラフト法 / ヨウ化水素濃縮 |
研究実績の概要 |
熱化学水素製造法ISプロセスにおいて、ヨウ化水素(HI)溶液中のHIを共沸組成濃度以上に濃縮する工程がある。HI濃縮はカチオン交換膜(CEM)を用いた電解電気透析が行われ、プロトン伝導の抵抗が低く、且つ、水とI-の透過を抑制したCEMが必要である。これに対して、本研究では、イオン飛跡グラフト法により、1次元円柱状イオンチャネルを持つ新規CEMを作製し、HI濃縮に適用することを目的とした。特異的な構造の1次元円柱状イオンチャネルはプロトンを効率的に輸送可能で膜抵抗を低減し、さらに、この構造がチャネルの含水膨潤を防ぎ、水やI-の透過の抑制を目指す。各種の製膜条件に対するHI濃縮性能の評価を実施し、これらより最適な条件のCEMを製膜し、低い電解電圧で高濃度のHI濃縮を達成する。 令和2年度は、まず、イオン飛跡グラフト法によるCEMの試作を行った。エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の基材に対して、重イオンビームとして、Xe照射を行い、基材膜に対してスチレンモノマーをグラフト鎖として重合した後、スチレングラフト鎖をスルホン化し、CEMを作成した。この時、グラフト重合量を調整し、異なるイオン交換容量の膜を作成した。 本試作膜のHI濃縮に対する適応性を検討するため、電解セルに試作したCEMを装着し、HI濃縮試験を実施した。その結果、従来のγ線グラフト膜と同等以上のプロトン輸率及び水の透過係数を示すことを確認し、イオン飛跡グラフト法によるCEMがHI濃縮に適応性を有することを確認した。次年度以降は、さらに、イオンビームのイオン種等のパラメータに対するHI濃縮性能データを取得し、膜性能の最適化を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱化学水素製造法ISプロセスにおける、ヨウ化水素(HI)溶液中のHIを共沸組成濃度以上に濃縮するHI濃縮工程に対して用いられるカチオン交換膜(CEM)に対して、イオン飛跡グラフト法による新規CEMを適応することで、HI濃縮の高性能化を達成することを目的としている。 本目的に対して、初年度はまずイオン種に対して、イオン交換容量を変えたイオン飛跡グラフト法による試作膜を作成し、基本的なHI濃縮性能の指標となる含水率、I-含有率、膜抵抗、プロトン輸率及び水の透過係数のデータを取得し、適応性の評価を行う計画としていた。上記のデータ取得に対して、予定通りの試験を完了し、期待していた結果に近い範囲での結果を得ており、今後として、各種の製膜条件の依存性を着実に取得していくことで、当初の計画通り性能の最適化を図っていくことができると考えている。これにより、現在までの進捗状況をおおむね計画通り順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ヨウ化水素(HI)濃縮に用いられるカチオン交換膜(CEM)に対して、イオン飛跡グラフト法により作成したCEMを適応し、各種の製膜パラメータに対するHI濃縮性能のデータ取得を進めることで、膜性能の最適化を図り、HI濃縮の高性能化を図ることを目的としている。最適化すべき製膜パラメータは、イオン種、イオン照射フルエンス、イオン交換容量等、多岐にわたるが、初年度取得したデータより、イオン種の影響が顕著となるであろう結果であったため、今後、イオン種を最適化検討の主パラメータとして検討していくことで、データ取得に対する試験の省力化を図り、研究を推進していることを検討している。
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