本研究では、石油精製技術の一つである残油流動接触分解(RFCC)プロセスにおいて、重質油中に含まれる多環芳香族炭化水素を分解して高付加価値な単環芳香族炭化水素に転換することを目指し、反応機構の解明や反応条件の最適化に向けた機械学習の利用を検討してきた。特に、RFCCプロセスは原料に含まれる成分の組成が複雑であり、その中で進行する反応は複雑である。そこで、原料組成や反応条件から接触分解反応の生成物組成を予測するとともに、多環芳香族炭化水素の分解に対して重要な反応要因を抽出できるような機械学習モデルを構築することで反応機構の解明や反応最適化につなげることを試みた。 機械学習モデルを構築するためには大量の実験データが必要である。本研究では、従来のRFCC反応評価装置を見直し、大量のデータ取得が可能な新規実験装置を作製した。これにより、従来の5~10倍の速度で実験データを蓄積することができるようになった。 機械学習モデルの構築にあたっては、解釈可能性の高い線形回帰モデルに対して物理化学に基づく特徴量エンジニアリングを施すことで、解釈可能性と予測精度を両立するようなモデルの構築に取り組んだ。結果として、ブラックボックスな非線形回帰モデルよりも高い予測精度が達成できただけでなく、線形回帰モデルの標準回帰係数から重要な相互作用を解釈することができるようになった。 さらに、含酸素化合物の反応も取り入れることで、今後のRFCCプロセスにおいて期待されるバイオ原料のコプロセッシングに向けても、機械学習を用いた生成物組成予測モデルが有効であることを確かめた。
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