研究実績の概要 |
本研究では申請者が近年開発した噴霧液滴を反応場として利用した金属有機構造体(MOF)の噴霧合成プロセスを用いて、従来の手法では困難なマイクロ-メソ-マクロの階層的な細孔構造を有するMOF(HP-MOF)を創製することを目的とする。本研究課題は3年間の研究期間を予定しておりこの期間中に、①ソフトテンプレートを用いたマイクロ-メソ孔を有するHP-MOFのバッチプロセスによる合成で、HP-MOFの合成条件を明らかにし、②噴霧合成プロセスによるマイクロ-メソ-マクロ細孔を有するHP-MOFの合成およびメソ孔の制御を行う。さらに③HP-MOFの触媒・吸着・分離特性評価を行うことで、階層的な細孔構造がMOFの機能性に与える影響を明らかにすることを計画している。 2021年度においても前年度に引き続きMOFとして噴霧合成に関する知見が豊富なHKUST-1 (Cu3(BTC)2; BTC3- = 1,3,5-benzenetricarboxylate)を用いHP-MOFの合成条件を検討した。 前年度にブロードなメソ孔が形成されることがわかったイオン性界面活性剤であるCTABを用いて前駆体溶液組成を幅広く変更して噴霧合成を行った。メソ孔は多くの条件で形成されたが、規則的な細孔構造を持つHP-MOFは作製できなかった。その原因を調べるため、CTABを含む前駆体溶液を動的光散乱法で分析したところブロードなサイズのミセルが形成されていることがわかった。 そこで他のソフトテンプレートを探索し、非イオン界面活性剤P123がMOF前駆体溶液中でシャープなミセルを形成することがわかった。この溶液で噴霧合成を行ったところ、ある程度規則的なメソ孔が形成されることがわかった。
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