研究実績の概要 |
本研究では申請者が開発した噴霧液滴を反応場として利用した金属有機構造体(MOF)の噴霧合成プロセスを用いて、従来の手法では困難なマイクロ-メソ-マクロの階層的な細孔構造を有するMOF(HP-MOF)を創製することを目的とした。本研究課題の3年間の研究期間において、①ソフトテンプレートを用いたマイクロ-メソ孔を有するHP-MOFのバッチプロセスによる合成で、HP-MOFの合成条件を明らかにし、②噴霧合成プロセスによるマイクロ-メソ-マクロ細孔を有するHP-MOFの合成およびメソ孔の制御を行った。さらに③HP-MOFの吸着・分離特性評価を行うことで、階層的な細孔構造がMOFの機能性に与える影響を明らかにした。 2020年度、21年度までに噴霧合成に関する知見が豊富なHKUST-1 (Cu3(BTC)2; BTC3- = 1,3,5-benzenetricarboxylate)を用いHP-MOFの合成を検討した。その結果イオン性界面活性剤であるCTABとクエン酸を用いた協奏的テンプレートにより、30nm程度のメソ孔を有するHP-HKUST-1の合成に成功した。 22年度では異なるテンプレートとして非イオン界面活性剤であるP123を用いてHP-HKUST-1の合成を行った。P123を用いることで10nm程度のメソ孔を有するHP-HKUST-1の合成に成功した。また従来有機溶媒を用いる必要があるHKUST-1の合成をP123を用いると水のみを溶媒として合成することができることを見出した。 さらに本研究で得られたHP-HKUST-1の物質移動の向上を確認するため、色素吸着実験を行った。その結果、ソフトテンプレートを用いたHP-HKUST-1は用いなかった場合よりも高い吸着速度を示すことを明らかにした。
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