近年のプラント監視制御システムの急速な高性能化は、低コストで大量の監視変数にアラームを設定できる環境を運転現場にもたらした。しかし、個々のアラームの必要性や管理範囲の妥当性が十分精査されないままアラームシステムが設計されている運転現場も多く、有害アラームが増加している。 そこで本研究では、プラント運転データからの有害アラーム抽出法の開発を目的に、これまでに高速に有害アラームを抽出することができる有害アラーム抽出法を開発した。この方法では、有害アラームの抽出問題を数理計画問題として定式化し、スミス・ウォーターマンアルゴリズムにより有害アラームを抽出する。開発手法を、複数のマルファンクションを人為的に発生させた共沸蒸留プラントのシミュレーションデータに適用し有害アラームを抽出した。抽出した有害アラーム情報に基づきファーストアラーム以外のアラームの設定を削除し管理範囲を変更しプラントアラームシステムの適正化を試みた。適正化後のプラント運転データを再度分析した結果、有害アラームが削減できていることが確認できた。 本研究で開発した手法は、有害アラームをプラント運転データからピンポイントで抽出できるため、直ちに有害アラームの削除やアラーム管理範囲の変更などの具体的な対策を検討することができる。このようにプラントアラームシステムの評価を、従来の量的評価から質的評価へ転換することが本研究の特徴である。
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