金属ナノ粒子の触媒活性はその構造、サイズ、電荷など様々因子に依存するため、触媒活性の主要な影響因子を解明するのは難しい。特に、数個から十数個の原子から成る金属クラスターは柔らかく、多様な構造を有するため、触媒活性の理論解析するには、実在系に近い理論計算モデルを用いて、網羅的に計算する必要がある。本研究では多数の金属クラスターの構造を考慮し、活性点を系統的に調べ、機械学習を行い、活性サイトを明らかにすることを目指して研究を進めてきた。また、課題を進める中で、金属クラスターの構造に加えて、表面担持した金属クラスターの触媒活性の構造依存性へも研究を展開してきた。 最終年度では、これらの系統的探索に基づく知見を多数の実験グループとの共同研究によって実際の触媒反応の機構解析へと応用した。上海大学のZhang Dengsongグループにより窒化ホウ素(BN)担持したNi触媒がコーキング耐性を示した。多様な構造や活性サイトを計算した結果により、BN担持Ni触媒におけるコーキング耐性の根本的な理由が、C-H結合の選択的活性化にあることを示した。また、同実験グループは、欠陥があるh-BNに担持したNiCo粒子を創成し、CH4のドライリフォーミングに応用することで、コーク劣化抑制を実現した。これに対する理論計算により、欠陥の種類は表面の電子構造に強い影響を及ぼすことを明らかにした。窒素欠陥は電子ドナー、ホウ素欠陥は電子アクセプターになっており、担持された金属種類(NiCo)粒子によるCH4とCO2の反応活性に大きく影響することが分かった。今後、実験と理論の連携による、高活性な触媒を設計への展開が期待される。
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