令和4年度では,前年度に引き続き二酸化炭素存在下での触媒性能の向上を目指した.メタンに二酸化炭素を共存させたモデルガスを用いて反応を行い,触媒性能とその活性化方法について検討した.触媒の活性化方法として,メタン流通下で昇温し触媒上に予め活性金属種を生成させた後,二酸化炭素を共存させると,メタン直接改質反応は長時間活性を持続した.したがって,活性金属種を先に形成させることが重要であることを見出した.鉄系触媒の場合は二酸化炭素濃度20%以上では活性を示さなくなったが,10%では活性を持続した.これは,バイオメタンから二酸化炭素を分離する場合,二酸化炭素の残存量は10%以下にすると良い事になり,簡便な分離方法を採用することができ,システムの負荷を減らす事が出来る. ニッケル系触媒では40%まで活性を示すことがわかった.このことはバイオメタンをそのまま使用できることを意味する.そこで,北見市下水処理場より採取したバイオメタンにて反応を行った.未処理のバイオメタンでは反応しなかったが,脱硫したバイオメタンを用いると活性を示した.その値はモデルガスの実験結果とほぼ同程度であった.実際のバイオメタン中に含まれる硫化水素が触媒毒となっていると考えられる.しかし,バイオメタンを用いると,一酸化炭素が生成することがわかった.モデルガス実験では,二酸化炭素濃度が20%を超えると一酸化炭素が生成し,水素収率が低下した.ここでメタン転化率は大きく低下しないので,生成した水素と二酸化炭素間でメタネーションが進行することが示唆された.これをヒントに二酸化炭素をメタネーション反応でメタンを生成し,その後メタン直接反応を行ったところ,二つの反応を組み合わせる事により,二酸化炭素を効率よく固体炭素に固定化できることがわかった.今後は,反応条件や触媒の最適化を行っていく予定である.
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