研究課題/領域番号 |
20K05220
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
武石 薫 静岡大学, 工学部, 准教授 (40216841)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジメチルエーテル / 銅系触媒 / アルミナ触媒 / ゾルーゲル法 / 二酸化炭素 / 水素化反応 / 微小化 / スピネル構造 |
研究実績の概要 |
ジメチルエーテル(DME)は、燃焼しても黒煙などの粒子状物質を出さないなど、液化石油ガスや軽油に代わりうる次世代のクリーン燃料、また水素貯蔵体として期待されている。通常、DMEは、合成ガスからメタノールを生成し、そのメタノールを脱水縮合して得られる二段法で製造されている。そのため、DMEの価格はメタノールの約2倍になってしまう。経済的な製造法として、直接合成法があり、それには、メタノール合成触媒と脱水縮合触媒とを物理混合した触媒が用いられる。本研究代表者は、混合触媒よりも、ゾル-ゲル法で調製した銅系アルミナ触媒を単一で用いるほうがより高活性・高選択的にDMEを生成できることを見出している。今回、CO2の有効利用を目指し、CO2からのDME合成において、ゾル-ゲル法で調製した銅系アルミナ触媒の前処理法を変えることによるDME生成活性の変化を調査した。 スピネル構造のCuAl2O4を製造しやすい組成の40wt%Cu/Al2O3の前駆体を一段型ゾル-ゲル法で調製し、粉砕した前駆体を小分けし、それぞれ350、500、650、800℃で焼成、その後それらも小分けして、300、450、600、750℃で還元して、16種類の40wt%Cu/Al2O3を調製した。それぞれをCO2水素化反応に用い、DME生成などの触媒活性を調べた。最もDME生成速度が速くなったのは500℃焼成、450℃還元を施した触媒で、反応温度240℃、反応圧力 0.9 MPaGの時、DME生成速度は約411 μmol g-cat-1 h-1であった。XRD分析の結果から、800℃焼成するとスピネル構造のCuAl2O4が創生され、それを750℃で還元すると、微細なCu金属粒子が創生されることがわかった。しかし、今回の研究結果では、このことは残念ながらDME生成にあまり寄与せず、特にDME生成の向上にはつながらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一段型ゾル-ゲル法で調製した40wt%Cu/Al2O3前駆体を800℃の高温焼成することによって、スピネル構造のCuAl2O4を創製することができた。さらに、750℃の高温還元することによって、微細なCu粒子を創製することができた。微細なCu粒子を製造できれば、DME生成の向上が果たせると考えていたが、このことは、今回、DME生成の向上には特につながらなかった。したがって、「やや遅れている」との評価とした。 微細な銅粒子を創製することができたにもかかわらずDME生成向上につながらなかったのは、CO水素化反応によるDME生成の場合と同様に、ZnOなどの助触媒がなく、カチオニックな銅のサイトが存在しなかったから、と推測した。
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今後の研究の推進方策 |
微細な銅粒子の創製だけではなく、メタノール合成、DME合成に必要なカチオニックな銅サイトもできるように、助触媒となるZnO、ZrO2、Ga2O3、CeO2などを適宜、添加し、それぞれの触媒前駆体に対し、DME生成に最適な、焼成温度、還元温度を見出しながら、DME生成の向上を図る。 一段型ゾル-ゲル法ではなく、逐次型ゾル-ゲル法で、たとえば、ZnOを添加したCu-ZnO/Al2O3触媒前駆体を調製し、粉砕した前駆体を小分けし、それぞれ350,500,650,800℃で焼成、その後それらも小分けして、300、450、600、750℃で還元して、16種類のCu-ZnO/Al2O3を調製する。それぞれをCO2水素化反応に用い、DME生成などの触媒活性を調べる。同様に、ZrO2、Ga2O3、CeO2などでも行い、CO2からのDME生成における、最適な触媒組成、触媒前処理法を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス(COVID-19)のため、1年目の当初は研究に従事できなかった。また、全然、出張などができなかったので、出張費の利用が発生しなかった。今後は、予算の許す限り、実験、出張に関する経費として利用する予定である。
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