研究課題/領域番号 |
20K05221
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
杉山 茂 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70175404)
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研究分担者 |
加藤 雅裕 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (80274257)
霜田 直宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (50712238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルカン / アルケン / 脱水素 / 炭素析出 / 酸化ニッケル触媒 / アルミナ担体 / 触媒劣化耐性 / カーボンナノチューブ |
研究実績の概要 |
前年度のイソブタンからイソブテンへの接触脱水素をγ-アルミナに酸化ニッケルを担持した触媒を用いて行うと、通常の通塔時間に伴って活性が減少することに対して、活性が向上することを明らかにした。その成果を基に前年度の「今後の研究の推進方策」において、以下の3点を解明することを本年度の目的として。①エネルギー分散型X線分析装置を搭載した透過電子顕微鏡を用いたナノチューブ状ニッケルカーバイト種形成の確認。②アルミナ担体の場合は上記の改善挙動が見られるのに対して、シリカ担体では改善挙動が見られないため、シリカ-アルミナ2元系担体を用いてニッケルカーバイト種形成の有無の検討。③イソブタン以外の炭化水素、メタン、エタン、プロパンの接触脱水素の検討。①および②については、反応に伴う炭素析出上に高分散化されるニッケル金属触媒の形成が見られ、また過去の研究成果を検証することによって、ニッケルカーバイドの形成はできないことが明らかになったため、活性の改善挙動にはニッケルカーバイド種の形成ではなく、炭素析出に伴う触媒活性点である金属ニッケル種の形成が寄与していると結論付けることができた。③については、973K以上で行うメタンの接触酸化反応の場合は通塔時間に伴う活性の改善挙動は見られなかったが、773K程度で行うエタンおよびプロパンの接触脱水素反応の場合は、イソブタンと同様に通塔時間に伴う活性の改善挙動が見られた。イソブタンの場合と同様に、エタン、プロパンの場合、酸化ニッケルの担持率が20%程度前後で活性の改善挙動が見られ、担持率は少ない場合は通常の劣化挙動が、一方担持率が多すぎる場合は、初期活性自体が著しく低くなった。炭素析出量が適切に形成される酸化ニッケルの担持率が必須であり、担持量が少ないと炭素析出が不十分、担持量が多すぎると、高分散化された金属ニッケルが炭素によって再被覆を受け活性が激減した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に確認したγ-アルミナに担持した酸化ニッケル触媒によりイソブタンの接触脱水素活性が通塔時間と伴に改善される挙動が、α-アルミナ担体でも同様に起こることを確認し、反応後の触媒を、エネルギー分散型X線分析装置を搭載した透過電子顕微鏡で分析した結果以下の結果を得た。①γ-アルミナの場合、径の細い繊維状炭素析出が形成されたが、α-アルミナ担体の場合、径の太いカーボンナノチューブ状炭素析出が形成された。比表面積の小さな担体ほど炭素析出するサイトが限定され太くならざるを得ないことが明らかになった。②触媒活性種である金属ニッケルは、炭素析出の形成状態の差によらず、炭素析出とともに高分散化され、双方とも同様に通塔時間と伴に活性が向上していくことが明らかになった。このように本研究で検討した非常識な反応挙動についての機構的説明ができた。イソブタンに代わって、メタン、エタン、プロパンという低級アルカンからアルケンへの脱水素反応においても同様な挙動が合わられるか検討した。その結果、安定で反応温度を上げざるを得ないメタンの脱水素では、通塔時間に伴う活性の改善挙動は見られなかった。一方、イソブタンの接触脱水素と同程度、もしくは100K程度高い反応温度で行うことのできる、エタンやプロパンの接触脱水素反応では、イソブタンの場合と同様に通塔時間に伴う活性の改善挙動が、ほぼ同程度の酸化ニッケルを担持した触媒で観測された。つまり、イソブタンの接触脱水素の場合に見られた通塔時間に伴う活性の改善挙動は、酸化ニッケル担体の担持率と反応温度を制御することにより、広く見られる可能性があることを明らかにした。前年度ニッケルカーバイドの寄与を指摘したが、過去の研究成果や本研究の結果により、ニッケルカーバイド種の寄与はないと結論付けることができた。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に確認したγ-アルミナに担持した酸化ニッケル触媒によりイソブタンの接触脱水素活性が通塔時間と伴に改善される挙動が、α-アルミナ担体でも同様に起こることを確認し、反応後の触媒を、エネルギー分散型X線分析装置を搭載した透過電子顕微鏡で分析した結果以下の結果を得た。①γ-アルミナの場合、径の細い繊維状炭素析出が形成されたが、α-アルミナ担体の場合、径の太いカーボンナノチューブ状炭素析出が形成された。比表面積の小さな担体ほど炭素析出するサイトが限定され太くならざるを得ないことが明らかになった。②触媒活性種である金属ニッケルは、炭素析出の形成状態の差によらず、炭素析出とともに高分散化され、双方とも同様に通塔時間と伴に活性が向上していくことが明らかになった。このように本研究で検討した非常識な反応挙動についての機構的説明ができた。イソブタンに代わって、メタン、エタン、プロパンという低級アルカンからアルケンへの脱水素反応においても同様な挙動が合わられるか検討した。その結果、安定で反応温度を上げざるを得ないメタンの脱水素では、通塔時間に伴う活性の改善挙動は見られなかった。一方、イソブタンの接触脱水素と同程度、もしくは100K程度高い反応温度で行うことのできる、エタンやプロパンの接触脱水素反応では、イソブタンの場合と同様に通塔時間に伴う活性の改善挙動が、ほぼ同程度の酸化ニッケルを担持した触媒で観測された。つまり、イソブタンの接触脱水素の場合に見られた通塔時間に伴う活性の改善挙動は、酸化ニッケル担体の担持率と反応温度を制御することにより、広く見られる可能性があることを明らかにした。前年度ニッケルカーバイドの寄与を指摘したが、過去の研究成果や本研究の結果により、ニッケルカーバイド種の寄与はないと結論付けることができた。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:「化学工学会第87年会参加費一式:10,000円」と「鉛筆一セット:224円」が3月に納品となり、支払いが完了していないため。 使用計画:「化学工学会第87年会参加費一式:10,000円」と「鉛筆一セット:224円」の支払が4月に完了する予定である。
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