研究課題/領域番号 |
20K05222
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山口 修平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (50397494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 選択的水酸化反応 / 遷移金属錯体 / ゼオライト / ベンゼン酸化 / 過酸化水素 |
研究実績の概要 |
ベンゼンからフェノールへの水酸化反応に代表される有機基質の酸化反応は,有機化学工業分野およびファインケミカル製造にとって非常に重要な反応プロセスの一つである.本研究は,反応活性部位と活性点周辺の環境を考慮して設計した遷移金属錯体内包ゼオライト触媒を調製し,過酸化水素を酸化剤として,その触媒を用いた有機基質の選択的酸化反応を検討するものである. 今年度は「種々の鉄錯体を内包したゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤としたベンゼン類の酸化反応の検討」を遂行した.鉄錯体の配位環境がベンゼン酸化に与える影響を検討するために,鉄イオンは通常6配位八面体構造を有するため,鉄イオンの全ての配位座を占有したN6配位と2つの空配位座を有するN4配位の鉄錯体をゼオライトに内包した触媒をそれぞれ調製し,過酸化水素を酸化剤としたベンゼンの酸化反応を行った.どちらの触媒を用いてもフェノールが選択的に生成することがわかった.速度論的な検討により,N4配位の鉄錯体を内包させた鉄錯体の方が効率よく酸化反応が進行することがわかった. 今後の方針として,更なる反応活性の向上を目指し,触媒中の反応活性部位である遷移金属錯体の部分を他の鉄錯体や銅錯体やニッケル錯体を導入し,ベンゼン酸化反応に対する触媒活性を検討する.また,担体であるゼオライト中に存在するナトリウムイオンは反応活性部位にも存在し,基質の活性部位への導入や生成物の選択性に影響を与えていると考えられるので,他の金属イオンや有機カチオンとイオン交換することで活性点周辺の環境が触媒活性や生成物の選択性に与える影響について検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「種々の鉄錯体を内包したゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤としたベンゼン類の酸化反応の検討」を遂行した.鉄錯体の配位環境がベンゼン酸化に与える影響を検討するために,鉄イオンは通常6配位八面体構造を有するため,鉄イオンの全ての配位座を占有したN6配位と2つの空配位座を有するN4配位の鉄錯体をゼオライトに内包した触媒をそれぞれ調製し,過酸化水素を酸化剤としたベンゼンの酸化反応を行った.どちらの触媒を用いてもフェノールが選択的に生成することがわかった.速度論的な検討を行った結果,律速段階が異なるため,鉄錯体と過酸化水素の反応により生成する活性酸素種が異なることが推測された.鉄錯体の配位環境の違いから,N6配位の鉄錯体では過酸化水素とフェントン反応が起こりOHラジカルが活性種として生成し,4配位の鉄錯体では高原子価鉄オキソ種が活性種として生成していることが予測される.この反応系の活性化エネルギーは後者の方が低いので,N4配位の鉄錯体を内包させた鉄錯体の方が効率よく酸化反応が進行することがわかった. また,「遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある遷移金属錯体の最適化」,「遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」を検討するための鉄錯体や銅錯体やニッケル錯体を内包したゼオライト触媒の調製は順調に進んでおり,ベンゼン類の酸化反応へ展開する間近の状態となっている. 以上のように,本申請課題は,当初の目的通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の「種々の鉄錯体を内包したゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤としたベンゼン類の酸化反応の検討」を続行する.配位子を変えることで鉄錯体周りの環境を変えることができるので,種々の配位子を用いた鉄錯体をゼオライト細孔中に導入した触媒を調製し,ベンゼン酸化特性を詳細に検討していく. 次年度からは,「遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある遷移金属錯体の最適化」,「遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」を並行して検討を行う.前者の遷移金属錯体の最適化は,鉄錯体と配位環境を大きく変えないように同様な配位子を導入した銅錯体やニッケル錯体を用いて,ベンゼン酸化反応やフェノール選択性について検討を行う.後者のカチオンの最適化は,遷移金属錯体内包ゼオライト触媒をベースとして,ゼオライト中に現存するナトリウムイオンを他の金属カチオンや有機カチオンに交換して,ベンゼン酸化反応やフェノール選択性について検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 令和2年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初計画した出張が全てキャンセルとなったため,その分を物品費に加算し,キャラクタリゼーションに必要なガスクロマトグラフを購入した.触媒調製のために購入を予定していた薬品や器具が効率的に利用でき,消耗品費が抑えられたために,一部を次年度に繰り越す結果となった. (使用計画) 令和3年度の研究費は,薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費,学会などへの成果報告や研究打ち合わせのための旅費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である.
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