研究課題/領域番号 |
20K05223
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 英俊 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90532094)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フェノール / シクロヘキサノン / 水素化 / ニッケル / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、フェノールをシクロヘキサノンに直接変換する高効率で低コストなNi触媒反応を開発する。本変換はPd触媒を用いて工業化されているが、より安価でコスト競争力の高いNi触媒の利用が望まれている。しかしながら、これまでに報告されているNi触媒反応は実用化には程遠いレベルにあり、有効な触媒設計の指針もわかっていない。本研究は、本変換に優れた活性を示す新規Ni触媒を開発し、その反応機構の解明により本変換に有効な触媒設計の指針を得ることを目的とする。 【令和3年度の研究成果】当該年度は、次に示す計画により研究を実施した:(1)独自設計した低分子有機配位子及び高分子有機配位子の合成とそれらを表面保護剤とするNiナノ粒子触媒の調製、(2)調製したNi触媒によるフェノールのシクロヘキサノンへの直接水素化の検討、(3)開発した反応の反応機構の解明。まず、上記計画に従い、数種類の新規有機配位子を合成し、Niナノ粒子を調製することに成功した。次に、これらを触媒とするフェノールの水素化反応を検討した結果、低分子有機配位子から調製した触媒の一つがフェノール転化率9%においてシクロヘキサノン選択率75%を与えることがわかった。高分子有機配位子から調製した触媒においても、フェノール転化率31%、シクロヘキサノン選択率51%を与えるものが得られた。しかしながら、これらは触媒寿命が短く、フェノール転化率が高くなるとシクロヘキサノン選択率が低下することがわかった。 【令和4年度の予定】令和3年度に開発した触媒の構造に改良を加え、引き続き触媒活性を評価する。早い段階で高効率な触媒反応を開発できた場合は、反応機構の解明や実用化に向けた検討を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の実施計画は以下の3点であった:(1)独自設計した低分子有機配位子及び高分子有機配位子の合成とそれらを表面保護剤とするNiナノ粒子触媒の調製、(2)調製したNi触媒によるフェノールのシクロヘキサノンへの直接水素化の検討、(3)開発した反応の反応機構の解明。目標(1)(2)の触媒開発と触媒活性評価を実施しているが、今だ高効率・高収率な触媒反応の開発には至っておらず、計画(3)を実施できていない。しかしながら、触媒の構造と活性の関係について有用な情報が得られている。今後はその情報を基に触媒構造に微調整を加えて、研究を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、基本的には令和3年度の研究内容を継続する。具体的には、令和3年度に得た知見を基に新しいNi触媒を調製し、その触媒活性の評価を行う。フェノール転化率50%以上かつシクロヘキサノン選択率50%以上を示す触媒系を発見した場合には、更なる高性能触媒の設計指針を得るために、その反応機構を詳細に調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】年度末に出張を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で出張がキャンセルとなり、そのための旅費を使用できませんでした。残額を利用してガスクロマトグラフの修理を行いましたが、37721円が余りました。試薬を購入する等により更に使用することも可能ではありましたが、次年度に繰り越して高価なヘリウムガス(4~5万円)の購入に使用した方が良いと考えました。
【次年度における未使用額の使用計画】令和3年度の残金と令和4年度分の助成金を利用して、触媒開発に必要な有機合成試薬・金属試薬と分析に必要なヘリウムガス・その他備品を購入する予定です。
|