研究課題/領域番号 |
20K05228
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
熊田 陽一 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (70452373)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 貫通孔粒子 / クロマトグラフィ分離 / タンパク質 / 高速分離 |
研究実績の概要 |
本研究では、抗体医薬やウィルスベクターなどの巨大生体分子を高速かつ高効率に分離可能な貫通孔を有するギガポア粒子担体を調製し、本担体の各種クロマトグラフィ操作における分離特性を明らかにすること、さらには、独自に開発する単鎖抗体をリガンドとして用い、アフィニティクロマトグラフィによってこれら生体分子を選択的に吸着分離する際の分離特性を明らかにすることを目的としている。今年度は、既報にしたがって調製した貫通孔粒子のモルフォロジーを観察するとともに、クロマト粒子担体としての性能について基礎的な検討を行った。粒子径60micro-mの粒子径を有するギガポア粒子担体を調製し、電子顕微鏡にて粒子表面ならびに内部の立体構造について観察を行ったところ、表面、内部ともに比較的均一な貫通孔が形成されていることが明らかとなった。水銀ポロシメーターによる測定の結果、ポアの孔径はおよそ400nmであり、ウィルスベクターや抗体医薬などのバイオ医薬品が内部に浸透するために十分大きなポアが形成されていることが明らかとなった。粒子表面ならびに貫通孔内部表面に存在する水酸基を利用してグラフト化を行い、さらに、イオン交換基を導入することで、貫通孔にリガンド分子を導入することに成功した。種々のタンパク質の吸着特性を検討した結果、市販品と同様のpH吸着依存性を示し、イオン交換担体として利用可能であることが明らかとなった。今後は、クロマトグラフィ担体の物質移動特性、ならびに吸着特性を明らかにするとともに、ギガポアの物質移動特性を活かした巨大生体分子の高速分離方法の開発を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2020年度は、本研究で開発をすすめる粒子担体のクロマトグラフィ担体としての性能評価を行うことを第一目標としている。電子顕微鏡によって粒子表面ならびに粒子内部の微細構造を観察したところ、比較的均一な細孔が確認され、本粒子担体が均一な多孔質構造を形成していることが明らかとなった。水銀ポロシメーターによる孔径測定によってもそれらが確認され、おおよその孔経を決定できたのは大きな成果と言える。さらに、粒子表面ならびに細孔内部表面をグラフト化することで、比表面積を拡大し、さらに、イオン交換基を導入することに成功したことから、同様の方法を用いることで、様々なリガンド分子を固定化可能なことが示唆された。本粒子は、調製条件を変化させることで、粒子径ならびにポアサイズをある程度の範囲でコントロールできることが既往の研究から明らかとなっており、本知見を用いることで、様々な生体分子の分離剤として利用可能である。研究は、概ね計画通りに進んでおり、さらなる発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、貫通孔粒子の安定な製造方法の確立、ならびにクロマト粒子担体としての利用可能性が明らかとなった。今後、本貫通孔粒子のクロマトグラフィにおける性能評価を中心に市販のクロマト粒子担体との比較検討を行い、生体分子の本貫通孔粒子担体への吸着特性、ならびに送液状態における物質移動特性について詳細な解析を進めることを計画している。 本粒子は、これまでに開発・上市されてきたクロマトグラフィ担体と比較して、400nmという比較的大きな貫通孔を有することが特徴であり、本特徴を生かして粒子内の物質移動を大幅に改善できると考えている。したがって、今後は、本貫通孔粒子担体を充填したカラムを用いて、生体分子の物質移動特性を詳細に検討することを計画している。特に、inverse size exclusion chromatographyによる分配係数の測定、圧力損失の線流速依存性、さらには、HETPの線流速依存性を詳細に検討し、本クロマト粒子担体と既存のクロマトグラフィ担体との差異を明らかにする。また、リガンド分子のクロマト担体へのカップリング方法についても鋭意検討していく予定である。
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