本研究では、抗原レセプターと抗原との親和性に依存したシグナル調節機構を明らかにして、生体内の抗体産生系の新規な細胞選択機構を見し、これを応用して抗原レセプターシグナルの強度を細胞生存シグナルの強度に変換し、生体内での高親和性抗体の高効率な選択機構を模倣する技術を開発する。本研究では、DT40細胞を用いて抗原への親和性に依存した抗原レセプターシグナル調節機構を解明し、この知見を利用した有用な目的抗体の高効率選択技術を開発する。 抗原レセプター刺激に依存して誘導されるNR4A1 (nuclear receptor 4A1)の転写について、各種シグナル因子のノックアウトDT40細胞や各因子の特異的阻害剤を用いて探索した結果、特にCa2+イオンをセカンドメッセンジャーとするシグナル伝達経路が、DT40細胞におけるNR4A1の転写誘導に重要であることを見出した。 また、抗原レセプター刺激に依存して発現される遺伝子について、公的データベース上のDT40細胞を用いた関連研究のトランスクリプトーム解析データを利用して、抗原レセプターシグナル強度に依存した発現を示す遺伝子の絞り込みをし、データベース上で抗原レセプター刺激強度に発現誘導していることが想定されるいくつかの遺伝子について、本研究の実験系においても検証したところ、これら遺伝子が抗原刺激の強度に依存して発現誘導される候補遺伝子であることを見出した。さらに、これらの多くは、NR4A1と同様にCa2+イオンをセカンドメッセンジャーとするシグナル伝達経路に依存していることを見出した。
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