研究課題/領域番号 |
20K05233
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河邉 佳典 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30448401)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微細藻類 / グリーンセルファクトリー / ゲノム操作技術 / 藻類バイオテクノロジー / Cre/loxP / 藻類ゲノム工学 / 人工遺伝子発現システム |
研究実績の概要 |
光合成微細藻類は、持続可能なグリーンセルファクトリーとして大変注目が集まっている。微細藻類で遺伝子組換え技術がより簡便かつ確実にできれば、バイオ燃料やバイオ医薬品生産、また食品や色素用途等の使用において微細藻類のさらなる高機能化が期待できる。現在までに、効率的な核ゲノムにおける外来遺伝子の安定的高発現技術は確立されていない。本研究では、外来遺伝子の安定的高発現が困難な微細藻類において、ゲノム操作技術を用いてゲノム上で遺伝子を自由自在にデザインし、藻類の生物機能を最大限利用できるスマートセルを迅速かつ確実に構築する技術を開発することを目的とした。これまでに動物細胞ゲノム操作ツールを開発し、DNAの狙った部位で積極的に遺伝子改変可能な遺伝子導入・増幅法(AGIS)を開発してきた。初年度は、本技術の基本システムとなるCre/loxP技術を微細藻類(クラミドモナス)へ適用し、ゲノム改変が容易な本技術が実際に適用可能であること、また導入遺伝子を発現させることに成功した。また、外来遺伝子を高安定に高発現可能なクラミドモナスを独自のライブラリーからスクリーニングし、既往の報告よりも高発現なホスト細胞株の作製に成功した。Cre/loxPシステムを用いて同細胞へ目的遺伝子の部位特異的な遺伝子導入を行い、外来タンパク質発現を確認することができた。さらに微細藻類に適した人工遺伝子発現システムの評価モデル系を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル微細藻類Chlamydomonas reinhardtiiに対してCre/loxPシステムを用いた配列特異的な遺伝子導入を行うことで、外来遺伝子を安定的に発現するトランスジェニック微細藻類の作製するとともに、Cre/loxPシステムがC. reinhardtiiに適用可能であることを示すことができた。一方、目的遺伝子を安定発現する微細藻類の作製には、ゲノム上の安定発現部位にloxP配列が組込まれたファウンダー細胞の樹立が不可欠である。これまでにloxP配列とともに導入したレポーター遺伝子の発現を解析したところ、既往の報告よりも2.8~17倍高い導入遺伝子発現を示すとともに、抗生物質非存在下においても、長期安定的に高発現を示した。そしてCre/loxPシステムを用いて同細胞へ目的遺伝子を部位特異的にノックインし、タンパク質発現を確認することができた。さらに、微細藻類に適した人工遺伝子発現システム評価系を構築した。これらの成果の一部を複数の国内学会に報告した、または報告予定である。これらのことから本年度は概ね順調に進展させることができ、目的を達成することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の実験計画に基づいて、以下の検討項目課題を行う。 ・微細藻類に適した人工転写活性化の開発と人工遺伝子発現システムの構築 ・人工遺伝子発現ネットワークの設計 ・有用物質生産への応用
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