研究課題/領域番号 |
20K05235
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
村上 明一 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00733635)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Dual-VHH抗体 / VHH抗体 / 結合様式 / 低分子抗原 / 特異性 / 親和性 |
研究実績の概要 |
単ドメインで抗原と結合できるVHH抗体には欠点がある。その一つが「低分子抗原に対する親和性と特異性の低さ」であり、VHH抗体の「安定性の高さ、生産性の良さ」などの利点を温存し、かつ、低分子抗原に対しても十分な親和性と特異性を有するヘテロ2量体化VHH抗体(Dual-VHH抗体)の研究を進めている。Dual-VHH抗体は、異なる2つのVHH抗体で低分子抗原を「挟み込む」形で結合することにより低分子抗原に対しても十分な親和性と特異性を獲得する。既に20憶の多様性からなるDual-VHH抗体提示ファージライブラリーを構築し、低分子モデル抗原として使用したFluorescein-4-isothiocyanate(FITC)に結合するクローンの取得を試み、成功している。このヘテロ2量体からなるクローンのそれぞれのVHH抗体単独、または、各VHH抗体のホモ2量体を大腸菌タンパク質発現系により発現・精製し、各VHH抗体の抗原に対する結合性を再評価したところ、結合力が大きく減少し、オリジナルのヘテロ2量体により高い結合能力を発揮すること、すなわち、異なる2つのVHH抗体が協調して低分子抗原と結合していることが明確になった。さらに詳細な「異なる2種のVHH抗体による新規な抗原結合様式の解明」を目指し、既得の複数の抗FITC Dual-VHH抗体クローンを用いて、競合ELISAを行った結果、標的抗原であるFITCに対して、比較的低濃度で競合されるクローンと比較的高濃度でなければ競合されないクローンに大別できた。後者は、ELISAプレートに固相したキャリアタンパク質に複数供給結合されたFITC抗原にアビディティー結合することで結合性を発揮し、前者は2つのVHH抗体の協調により「挟み込み」型で結合していることが示唆された。今後の更なる解析に向け、Dual-VHH抗体の大量生産系も構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験計画に基づき、進めることができている。VHH抗体は15KDa以下の低分子単ドメイン抗体であることから、大腸菌タンパク質発現系による安価大量生産が可能である。一方で、今回注目しているDual-VHH抗体は、VHH抗体をリンカーで結合した2量体化VHH抗体であることから、大腸菌発現系による抗体サンプルの調整に苦慮する可能性が考えられたが、多くのクローンに関して、収量は1/5程度に減るものの、特異性や親和性解析に使用するには十分な量が確保できた。しかしながら、クローンによっては収量が非常に少ない。また、今後、構造解析を予定しており、その際にはより多くの抗体タンパク質が必要になることから、ピキア酵母を使用したタンパク質発現系を取り入れ、Dual-VHH抗体の生産を進めたところ、時間は大腸菌系の概ね5倍程度を要するが、収量は大幅に増加した。よって、今後の研究準備としても、問題なく遂行できている。 当初の仮説の通り、2つのヘテロなVHH抗体を連結することで、低分子抗原に対しても高い特異性と結合力を発揮する抗体が得られることを再確認できたことから、本研究はさらに発展すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Dual-VHH抗体が、本来の単ドメインVHH抗体が有する熱安定性やタンパク質変性剤に対する耐性等の利点を保持しているかを検討する。さらに、X線構造解析等で直接的に観察することにより、Dual-VHH抗体が低分子抗原に結合する際の、新規な結合様式が明らかにする計画である。 Dual-VHH抗体の汎用性を確認すべく、既にFITCに結合するDual-VHH抗体に加えて、より低分子である(4-hydroxy-3-nitrophenyl)acetyl (NP)をモデルハプテン抗原として使用して特異的に結合性を有するDual-VHH抗体の取得を試みる。ハプテンNPは申請者が長年の研究材料として使用した経験があることに加え、2,4-Dinitrophenol (DNP)や2,4,6-trinitrophenol (TNP)を用いた類似ハプテンを用いた特異性評価が容易かつ明瞭に行える利点がある。よって、抗NP-Dual-VHH抗体クローンの取得が可能であった際には、これら類似ハプテンを使用した特異性と親和性の解析に加え、結合様式の解明を上記の抗FITC同様に試み、実用化も見据えた研究開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により消耗品の納品が遅れたことで少額の残金が生じました。この残金は来年度の予算と合わせて執行予定です。
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