研究課題/領域番号 |
20K05238
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
村井 晋 東邦大学, 医学部, 助教 (90287540)
|
研究分担者 |
中野 裕康 東邦大学, 医学部, 教授 (70276476)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 計画的ネクローシス / FRETバイオセンサー / 生体イメージング |
研究実績の概要 |
抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)の過剰投与は急性腎障害(AKI)を引き起こす。これまでにCDDP投与AKIモデルでは、腎臓の近位尿細管上皮細胞が計画的ネクローシス(ネクロプトーシス)におちいること、及びネクロプトーシスの実行因子の1つであるRipk3欠損マウスでは、CDDP投与による腎障害が軽減することが報告されていた。これまでにFRETバイオセンサーSMARTを利用して培養細胞でネクロプトーシスの誘導をFRET/CFP比の上昇からライブセルでイメージングできることを報告してきた。そこでAKIモデルにおけるネクロプトーシスをin vivoでモニタリングするためにSMARTを発現するトランスジェニックマウス(SMART Tgマウス)を樹立した。CDDPを投与したSMART TgマウスのFRET解析の結果から近位尿細管の閉塞後に尿細管上皮細胞のFRET/CFP比が上昇すること、傷害を受けた尿細管上皮細胞の一部でFRET/CFP比が上昇していることを見出した。このことからCDDP投与により近位尿細管の閉塞後にネクロプトーシスが誘導され、そのことがさらなる尿細管上皮傷害の増悪に寄与している可能性が示唆された。Ripk3欠損SMART TgマウスではCDDP投与により尿細管上皮傷害はおこるものの尿細管の閉塞はみられずFRET/CFP比の上昇もみられなかった。以前の報告とは異なり、Ripk3欠損SMART TgマウスではCDDP投与によるアポトーシスが亢進した結果、AKIが野生型マウスと比較して増悪していることが明らかとなった。以上よりAKIによる尿細管傷害には少なくともアポトーシスとネクロプトーシスの両者が関与しているが、アポトーシスは尿細管閉塞とは関連のないこと、さらにネクロプトーシスによる組織損傷は、尿細管閉塞と密接に関連している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、FRETプローブ発現マウスの組織に対するin vivoでのFRETイメージングについて、すでに終了し成果をまとめている予定であった。しかし新型コロナ感染拡大により、共同研究者である松田博士(京都大)の研究室への出張を見合わせたため、博士所有の二光子顕微鏡によるイメージング解析を中断していた。2021年度になって松田博士との共同研究を再開したものの十分な研究成果は得られておらず研究成果の発表は2022年度になる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
再開したin vivoイメージングの解析を進め、再現性のある結果を得ることで確実な結論を得る。さらにその結果をまとめ計画年度終了までに研究成果を投稿論文の形で発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会参加のための交通費がZoom開催となり支出する必要がなくなったため。2022年度の学会参加のための予定していた旅費と合算して使用する予定である。 2022年度の予算は研究推進のために必要な試薬及び消耗品の購入、実験動物(マウス)の購入、共同研究のための出張旅費に使用する。また、成果発表のための経費として国内学会参加費用及び旅費と論文投稿料に使用する予定である。
|