研究課題/領域番号 |
20K05241
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
松下 琢 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (10209538)
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研究分担者 |
石田 誠一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (10270505)
古水 雄志 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (80735829)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん細胞 / 三次元培養 / 抗がん剤 / 薬剤耐性 / MDR / 膵臓がん / 高純度シリカファイバー / 薬剤耐性克服薬 |
研究実績の概要 |
がんは、抗がん剤を使って治療を続けるうちに、細胞の薬剤排出活性の亢進などにより薬剤耐性を獲得することがあり、この薬剤耐性の克服は、がん治療の大きな課題となっている。現在、抗がん剤の開発試験では、がん細胞を単層培養した2次元培養が一般的に行われているが、薬剤耐性を再現できているとはいえない。そこで本研究課題では、これまで研究代表者らが行ってきた“がん細胞の三次元(3D)培養技術に関する知見”と“高純度シリカファイバーに関する知見”を組み合わせて、さまざまな臓器由来のがん細胞を3D培養し、生体外で薬剤耐性現象を再現・制御し、薬剤耐性の克服に向けた新しい抗がん剤スクリーニング系への応用に関する知見を得ようとするものである。本年度は下記の成果を得た。 1)膵がんBxPC-3細胞に対するDOXのIC50値は、monolayer培養で7.5 μM、Cellbed培養で11.8 μMと、Cellbed培養はmonolayer培養に比べ高い値を示した。従って、Cellbedを用いた培養系は肝がん細胞以外の細胞においても薬剤耐性現象を再現できる可能性が示された。 2)BxPC-3細胞の薬剤排出トランスポーターであるMDR1、MRP2は、monolayer培養及びCellbed培養ともに、発現は確認されなかったが、他の薬剤排出トランスポーターであるBCRPは、monolayer培養・Cellbed培養において発現が確認された。特にCellbed培養では細胞内部にも発現していることが確認された。よってこれより、上記の薬剤耐性の上昇の要因としてBCRPの発現が関わっている可能性が示唆された。 3)BCRPの阻害剤であるKO143とDOXを併用した条件における細胞増殖抑制試験を行ったところ、Cellbed培養によるIC50値の上昇は、薬剤排出トランスポーターの作用による薬剤耐性であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで先行研究では、肝がん細胞を用いた研究が行われてきた。本研究では、膵臓がん細胞を用いた三次元培養によるDOXにする耐性現象を再現することができた。さらに、この耐性現象は、BCRP阻害剤によって克服される可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は膵臓がん細胞を用いた三次元培養によるDOXにする耐性現象を再現することができた。今後は、膵がん細胞の三次元培養における薬剤耐性メカニズムの検討を目的として、まず、薬剤排出トランスポーターの関与やアポトーシス抑制タンパク質の関与について検討する。さらに、膵がん細胞の三次元培養における低酸素誘導因子の発現について検討する。そして、他のがん細胞についても三次元培養による薬剤耐性現象の再現ならびに薬剤耐性メカニズムについて検証する。また、薬剤耐性を克服する薬剤についてスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部納品できない消耗品があり、代替品の使用で次年度使用額が生じた。
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