研究実績の概要 |
<光刺激駆動型ロールアップナノシートの構築>光重合性部位としてジアセチレン長鎖アルキルジカルボン酸、その片末端にグルコースアミン、もう一方の末端にグリシンをアミド結合させた糖脂質を水中で自己集合させることで、ロールアップナノシート(=ナノチューブ)を得た。粉末エックス線回折測定などにより、ナノチューブは、糖脂質の二分子膜構造からなることが分かった。ナノチューブに紫外光を照射すると、糖脂質の分子間でジアセチレン部位の光重合が二分子膜構造を維持しながら進行すること、そしてそれに伴いロールアップ化が進行し、ナノチューブの曲率が増大、細孔径が60 nmから10 nm以下へと収縮することが明らかとなった。また、糖脂質末端のグリシン残基にウレア型官能基(-C(=X)NH2, X = NH or O)を修飾したナノチューブも調製した。 <タンパク質リフォールディング促進機能の評価>6 mol/l塩酸グアニジンによって化学変性させた緑色蛍光タンパク質、リゾチーム、炭酸脱水酵素、クエン酸合成酵素それぞれの水溶液と凍結乾燥した上記ナノチューブの粉末を混合し、一晩攪拌した。この操作により、ナノチューブの細孔内に変性タンパク質・酵素を包接することができた。紫外光を照射し、光重合を介してナノチューブの細孔径を収縮させたところ、当該タンパク質・酵素がバルク水中に放出されると同時に緑色蛍光タンパク質の蛍光活性、リゾチーム、炭酸脱水酵素、クエン酸合成酵素の触媒活性が回復することが分かった。ナノチューブ細孔の収縮現象が、タンパク質・酵素のリフォールディングを促進することを突き止めた。また、ナノチューブへのウレア型官能基の導入が、リフォールディングの効率を著しく増大させることも明らかにした。
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