• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

酸化セリウム助触媒のクラスター化による触媒金属の酸化抑制:仮説の検証と実触媒設計

研究課題

研究課題/領域番号 20K05252
研究機関株式会社コンポン研究所

研究代表者

早川 鉄一郎  株式会社コンポン研究所, 研究部, 研究員 (90557745)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードクラスター / X線吸収分光 / 酸化状態 / 銅/酸化セリウム / 酸化抑制
研究実績の概要

本研究は「セリアを助触媒とした触媒系において、セリアをクラスター化すると酸素過剰雰囲気における触媒金属の酸化が抑制され、触媒性能が向上する」との仮説を検証し、 気相孤立系と担持系での測定から実触媒設計の指針を得ることを目的とする。
2020年度は気相孤立系として酸化セリウムクラスターと複合化した銅原子および酸化マグネシウムクラスターと複合化した銅原子それぞれの酸化状態を比較して、酸化セリウムクラスター上では銅が1価に保たれるのに対して酸化マグネシウムクラスター上では銅が2価に酸化されるとの結果を得た。すなわち銅原子の酸化抑制は酸化セリウムのクラスターと複合することで発現すると結論できる。また担持系での測定準備として搬送装置を設計した。
2021年度は、実際に銅/酸化セリウムクラスターを担持して銅吸収端でのX線吸収スペクトルを測定した。その結果、銅に対応したエネルギーにピークは見られたものの、銅の酸化状態を特定するには信号強度が不十分であった。その一方で気相孤立系では、銅1原子/酸化セリウムクラスターに類似した系に対して酸化状態を調べ、酸化抑制効果について検討した。マンガン1原子/酸化セリウムクラスターでは酸化抑制効果が見られないことが分かった。これは銅原子に比べてマンガン原子が酸化されやすいことを反映しているものと思われる。また銅原子数を増やした銅2原子/酸化セリウムクラスターでは酸化抑制効果は見られるものの銅1原子/酸化セリウムクラスターに比べて弱まっていることが確認された。これは酸化セリウムクラスターのサイズが変わっていないために銅原子数が増えると酸化抑制効果が相対的に弱まるという可能性と、銅が2原子になったため酸化されやすくなった可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は気相孤立系と担持系の両面から進める計画である。担持系については信号強度の問題があるが、気相孤立系では酸化抑制効果について多くの知見が得られ、全体としておよそ計画通りに進捗していると考えられる。

気相孤立系:2020年度に銅1原子/酸化セリウムクラスターおける銅の酸化抑制が酸化セリウムクラスターとの複合化に起因することを確認し、本研究における仮説の根幹が正しかったことを確かめた。本年度はその類似系について酸化抑制効果の有無や強弱を調べた。具体的にはマンガン1原子/酸化セリウムクラスターでは酸化抑制効果が見られないことが分かった。これは銅原子に比べてマンガン原子が酸化されやすいことを反映しているものと思われる。また銅原子数を増やした銅2原子/酸化セリウムクラスターでは酸化抑制効果は見られるものの銅1原子/酸化セリウムクラスターに比べて弱まっていることが確認された。これらの結果から酸化セリウムクラスターによる酸化抑制効果の限界についての知見が得られ、酸化抑制機構の解明にも近づいたのではないかと期待される。
担持系:本年度は実際に銅/酸化セリウムクラスターを担持して銅吸収端でのX線吸収スペクトルを測定した。その結果、銅に対応したエネルギーにピークは見られたものの、銅の酸化状態を特定するには信号強度が不十分であった。

今後の研究の推進方策

酸化セリウムクラスターによる酸化抑制機構の解明を目指して、引き続き研究を進めていく。解明のためにはクラスターの電子状態を理解することが必要であり、銅やマンガンの酸化状態に加えてセリウムや酸素のスペクトルを測定し、包括的なな理解を目指す。さらに、電子状態を詳細に理解するには量子化学計算が有効である。量子化学計算の信頼性を上げるためには、クラスターの幾何構造についてのデータがあることが望ましいので、そのような測定についても検討し、可能であれば実施していく。

次年度使用額が生じた理由

消耗品購入のタイミングが2022年度にずれ込んだため

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi