本課題では、炭化水素分子からなる共有結合骨格を出発物質として種々の高次構造の電子物性の解明、とくに、高次構造形成時生じる骨格間の相互作用が電子物性に及ぼす影響の解明を行った。さらに、高次構造を用いた新奇物性発現の可能性の探索も併せて起こった。その結果、このような高次構造体においては、骨格間の束縛が非共有結合的な弱い相互作用によるものでも、骨格間の微小な波動関数の混成や分極効果により、有意な電子物性変調が期待できることが明らかになった。このことは、このような共有結合性有機骨格構造体を用いた新たな物質科学の発展を促すという点で、極めて学術的に意義のある成果である。
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