研究課題/領域番号 |
20K05256
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
濱中 泰 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20280703)
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研究分担者 |
葛谷 俊博 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00424945)
武田 圭生 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70352060)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子ドット / 超格子 / 光物性 |
研究実績の概要 |
量子ドットを3次元規則配列させた量子ドット超格子では、ドット同士が互いに協力し合い、特異な電気/光学特性が発現することが予測されており、応用上も興味深い。しかし、このような精密な構造を作製することが難しいために研究が進んでいない。本研究では、量子ドットを精密に配列させる新規な方法を開発し、量子ドット間の協力的な相互作用の特徴を解明して、新しい光機能を開拓する。 本研究の特徴は、量子ドットの集合体を圧縮して、量子ドットが最密に配列した3次元超格子構造を作製する点にある。そのために、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使った高圧発生技術を応用する。初年度は、DAC及び高圧分光に用いる測定装置群を設計、構築した。その結果、量子ドット集合体に約6GPaまでの任意の圧力を印加することと、in situな分光計測が可能となった。 また、高圧印加とは異なる量子ドット超格子の作製法を模索し、ディップコート法を応用して、基板上に量子ドットが整然と配列した薄膜を作製することに成功した。この薄膜のX線回折パターンには高次の超格子反射ピークを観測することができた。この方法では、高圧法と異なり超格子構造の微妙な制御はできないが、試料サイズが大きくマクロな分析法を適用することができるので、超格子特有の光物性や電気特性を調査するのに適している。一方、自己組織化による量子ドット超格子の作製にもトライした。整った外形の量子ドット集積体試料を得たが、超格子を形成しているかどうかは未確認である。 一方、良質なCdSe系の量子ドットの合成法を取得し、秩序性は低いが最近接ドット間の距離が一定に保たれた量子ドット集積体を作製した。この集積体においては、ドット間相互作用の一つである共鳴エネルギー移動現象を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子ドット3次元超格子に対して、ドット間の波動関数が結合した新しい電子状態や量子ドットのコヒーレントな結合による超蛍光などの新奇な光物性が予測されている。このような光物性を深く理解し、新しい光機能を開拓することが本研究の目的である。当初の計画では、精密に量子ドット間隔が制御された超格子を圧力印加法により作製して、特有の光物性を観測すること、および、その発現機構を解明して量子ドット間の協力的相互作用を理解することを予定していた。 初年度には高圧印加による超格子作製にはまだ成功していないが、高圧印加法を実施する環境整備が完了した。一方、並列しておこなってきた別の方法では、量子ドット超格子を作製することに成功した。これによって、量子ドット超格子の基礎的な光物性を調査する準備は整った。また、新たに高品質な量子ドットを合成する技術を獲得したので、これを用いれば、量子ドット間の協力的な相互作用が顕著に現れる超格子を作製することができると期待される。 以上の点より、量子ドット超格子の光物性研究を進める具体来な準備が整ったと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築した高圧印加/分光システムを利用して、量子ドット集積体を圧縮して、量子ドット超格子の作製を試みる。同時に、ドット間距離を制御して、ドット間相互作用のメカニズムを調べる。また、量子ドットの詳細な構造を、放射光X線回折によって調査する。構造解析については、初年度末に共同研究者に加わった武田氏の協力を得る。 一方、量子ドット試料としては、これまでに用いてきた多元系量子ドットに加えて、初年度に合成技術を確立した良質なCdSe系量子ドットを用いることができる。一方、初年度にディップコート法および自己組織化法によっても量子ドット超格子を作製することに成功している。特にディップコート法では、高圧法と異なりマクロなサイズの量子ドット超格子が作製できるようになった。まず、この量子ドット超格子を対象として各種分光測定を実施して、超格子に特有の光物性の観測とそのメカニズム解明を目指す。超格子の精密な構造制御については高圧法を使って実施する。
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