最終年度においては、ナノスクロールの光伸縮運動における分子の駆動部分となるアルキル鎖部位の影響を明らかにするために、異なるアルキル鎖長をもつアゾベンゼンとニオブ酸ナノシート複合化し、新規な光応答性ナノスクロールを作製して、その光運動機能を解析した。アルキル鎖の炭素数が0~8までのアゾベンゼン分子をニオブ酸ナノシートと複合化することで、炭素数1~8のアルキル鎖をもつアゾベンゼンでナノスクロール化ができることを見出し、ナノスクロール化に末端アルキル鎖が重要であることを明らかにした。また、それらを光反応させて伸縮運動を解析するとアルキル鎖長により光運動が変化し、アルキル鎖長が大きい方が大きな光運動を誘起できるが、炭素数が6を超えると伸縮運動が強く抑制されることを見出した。したがって、ナノスクロールの光運動機能発現には、分子レベルの構造・物性制御が重要であることを明らかにした。 また、研究機関全体を通じて、表面構造の異なるナノシートとアルキル鎖長異なるアゾベンゼンを複合化することにより、ナノシート上に炭素数6 のアルキル鎖をもつアゾベンゼン分子を適度な空隙を持たせて均一に配置することで、効率良くナノスクロールの光伸縮運動を誘起できることを見出した。このことから、分子レベルで誘起されるミクロな運動をマクロな運動につなげて光運動機能を引き出すためには、精密な分子配列や構造・物性制御を行うことが極めて重要であることが明らかにした。この光運動するナノスクロールは、新しい光アクチュエーターへの研究展開につながり、また分子材料の新しい機能性分子材料開発の手法として新たな研究展開が期待される。
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