研究課題/領域番号 |
20K05273
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井戸田 直和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (60451796)
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研究分担者 |
菅原 義之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50196698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 層状ニオブ酸塩 / 有機ホスホン酸 / 原子移動ラジカル重合 / ガドリニウム / 層間表面修飾 / ナノシート |
研究実績の概要 |
今年度は、層状六ニオブ酸塩(NbO)の層間選択的な表面修飾・分子導入として、反応性の高い層間Ⅰでの表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)法によるポリアクリルアミド (PAAm) 修飾と反応性の低い層間Ⅱへのガドリニウム (Gd) イオンのインターカレーションを検討した。また、得られた試料における磁気緩和時間の短縮効果を核磁気共鳴法によって評価した。ジオクタデシルアンモニウムイオンをNbOの層間Ⅰのみに導入することで、層間Ⅰの層間距離を拡大した後に重合開始基を有するホスホン酸(CPMP)を層間Ⅰに修飾した(CPMP_NbO)。次に、ドデシルアミンをCPMP_NbOの層間Ⅱに導入して層間距離を拡大した後に、Gdイオンを層間Ⅱにインターカレーションした(CPMP_Gd_NbO)。各ステップでの試料をXRD, ICP-OES, IR, TG, 固体NMR, SEMで確認したところ、NbOの板状結晶を維持したまま層間ⅠにCPMPの修飾、層間ⅡにGdイオンが導入されていることが示唆された。また、インターカレーションの反応回数を増やすことで、Gdイオンの導入量が増加するとともに層間距離も増加した。CPMP_Gd_NbOを用い、SI-ATRPによる層間ⅠでのPAAm修飾を行った所(PAAm_Gd_NbO)、IRやTGからPAAmの修飾が確認でき、AFMより15 nm程度の厚さのナノシートを確認できた。これはSI-ATRPによりNbOの層間Ⅰからナノシート状に剥離したことを示差している。PAAm_Gd_NbO分散液(重水)の磁気緩和時間(T1)の測定より、Gdイオン未導入の試料と比較して有意にT1が減少していおり、緩和短縮効果が生じたと考えられる。一方、Gdイオンの導入量が多いPAAm_Gd_NbOでは、少ないものよりも緩和時間が長くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、層状ニオブ酸塩の位置選択的な表面修飾や薬剤となるガドリニウムイオンの導入からナノシートとして回収する方法を達成し、それらの磁気緩和時間の短縮効果を確認することができた。まだナノシートの作製や解析については改良の余地があるが、最終的な薬物キャリアの基礎的な検討は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討したナノシートでは層間Ⅰに修飾したPAAmの厚みが不明であったため、2層構造となっているかが確認できなかった。今後は、PAAmの厚みを調べると共に、分子サイズが明確な生体適合性の低分子ホスホン酸を用いた2層構造ナノシートの作製にも着手する。また、Gd導入量によって緩和時間短縮効果が異なったことから、層間ⅡへのGdイオン導入の制御も検討を続ける。これらのナノシートの生体適合性の評価として、培養細胞を用いたin vitro実験を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍に伴う学会中止や外部施設への移動自粛があったため、計上していた旅費や参加費、研究打合せや外部実験のための交通費を使用できなかったため繰り越しが生じた。また、外部実験に用いるための一部消耗品費も同様の理由で売り越している。これらの繰り越し内容は、翌年度に実施するために使用する。また、新たに計画した生体適合性の低分子ホスホン酸を用いた2層構造ナノシートの作製やそれに伴う研究調査・成果発表に使用する予定である。
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