研究課題
昨年度は、層状六ニオブ酸塩(NbO)の層間Ⅰに重合開始基を有するホスホン酸(CPMP)を修飾し、層間ⅡへGdイオンをインターカレーションした後に、層間Ⅰを超音波により選択的に剥離させ、表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)法によってアクリルアミドを重合することで2層構造を制御したナノシートを合成した。一方で、層間Ⅱに修飾したポリマーが短長となり、SI-ATRPによる鎖長制御は達成できなかった。今年度は、ホスホン酸の構造および重合操作を検討することで、ポリマー修飾制御を試みた。CPMPはエステル結合を介してホスホリル基と重合開始基が結合しているが、NbO層間反応を進めている間にエステル結合の分解が確認された。新たに合成したホスホン酸(CBPA)は、Michaelis-Arbuzov反応により重合開始基が直接ホスホリル基と結合しており、分解の影響を抑えることができる。また、SI-ATRPでは凍結脱気により反応系内の酸素を除去しているが、溶液系のATRPと比べて真空度が低いことが確認された。これはNbO層間に吸着した気体分子の影響と考え、凍結脱気時における温度を検討した。その結果、CBPAを層間Ⅰに修飾した試料では、NbO層間反応を進めても重合開始基の脱離は見られず、凍結脱気時にNbOを加温することでSI-ATRPにおけるポリマー転化率が向上し、従来の手法よりもナノシートの回収量も多くなった。重合効率が良くなったことで層間からのポリマー生長による層間Ⅰの剥離が促進したと考えられる。層剥離の促進は、ナノシートの2層構造の制御において重要な要素であり、本手法により2層ナノシートの効率的な作製が可能となる。また、生体適合性に優れる2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンや温度応答性を持つN-イソプロピルアクリルアミドを用いたポリマー修飾2層ナノシートの作製にも成功した。
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