| 研究課題/領域番号 |
20K05276
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| 研究機関 | 近畿大学 |
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研究代表者 |
仲程 司 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10375371)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 環状ジアミノセレノシクロファン / 金属ナノ粒子 / キラルアミノ酸誘導体 / セレヌランジカチオン |
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| 研究実績の概要 |
金属ナノ粒子は近年、触媒、光学材料、光エネルギー変換材料への応用と言った幅広い分野で注目されているナノマテリアルである。申請者らは近年、可逆的な酸化還元応答能に優れた1-アミノピレンを導入した環状ジアミノセレノシクロファンを用いた簡便な金属ナノ粒子合成法を見出している。本手法のメリットは、環状ジアミノセレノシクロファン誘導体と金、銀、白金等の貴金属塩の混合溶液に対して、紫外光を数分照射するだけで金属ナノ粒子が得られるというとてもシンプルな点にある。また、この手法では、直径数ナノメートル程度の粒子径の整った金属ナノ粒子が得られ、その精製も容易であるという利点も併せ持つ。本手法では、多量の配位子を共存させる必要がなく、金属ナノ粒子を容易に得ることができる。
今年度の研究に関して、申請者らはこれまで用いてきた1-アミノピレンに加え、金属イオンに対して強い配位能を示すことが期待できる2-アミノエタノールや、4-アミノベンゼンチオールを導入した新規な環状ジアミノセレノシクロファン誘導体の合成を実施した。さらに、次年度以降の研究計画に関連して、キラルなアミノ酸誘導体を導入した環状ジアミノセレノシクロファン類の合成とこれを用いた金ナノ粒子の合成にも着手した。キラルなアミノ酸誘導体を導入した環状ジアミノセレノシクロファン類においては、先行研究にて合成に成功していたフェニルアラニン誘導体導入環状ジアミノセレノシクロファンに加えて、キラルなトリプトファン誘導体を導入した化合物の合成にも成功した。またこれらを用いた金及びパラジウムナノ粒子の合成を行い、透過型電子顕微鏡観察によりその生成が確認できている。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和３年度当初の研究計画では、「キラルなアミノ酸を導入した環状ジアミノセレノシクロファン類の合成と電気化学的・化学的な酸化還元応答能の確認」の実施を想定していた。
まず、環状ジアミノセレノシクロファンに導入する官能基としてキラルなフェニルアラニン誘導体を導入した化合物を合成し、得られたキラルアミノ酸導入環状ジアミノセレノシクロファンの電気化学的・化学的な酸化還元応答能と構造変化を詳細に調査しすることに成功した。また、酸化前・酸化後の化合物の単結晶X線結晶構造解析にもそれぞれ成功し、化合物の酸化還元応答に対応したコンフォメーション変化の詳細を明らかにすることに成功した。フェニルアラニン以外のアミノ酸として、キラルなトリプトファン（アミノ酸）を導入した環状ジアミノセレノシクロファンに関しても、各種NMRスペクトルと円偏光二色性スペクトルを用いた解析により、その構造及びコンフォメーション変化の様子を解き明かすことに成功した。
さらに、合成の制約上導入したエステル基の加水分解反応に関しては、6N塩酸水溶液と加熱還流することで、加水分解により脱保護することに成功し、強酸性陽イオン交換樹脂を用いることで、脱エステル生成物を単離することにも成功した。さらに、得られた化合物は、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いて別のアミノ酸誘導体（1-ヒドロキシベンゾチアゾール）と脱水縮合することで、ペプチド化することにも成功した。これらのことから、環状ジアミノセレノシクロファンに導入したキラルアミノ酸部位を足掛かりとして、様々なペプチドを導入した環状ジアミノセレノシクロファン類が合成できることを明らかにした。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実施計画では、「環状ジアミノセレノシクロファンを用いたキラル金属ナノ粒子（金、パラジウム、その他の金属）の合成と触媒反応」を主要な研究テーマとして実施していく予定である。具体的には、キラルなアミノ酸を導入したキラル環状ジアミノセレノシクロファン類を用いて、金属の種類の異なる様々なキラル金属ナノ粒子の合成を検討していく。また、触媒能の発現が特に期待できるパラジウムナノ粒子の合成に注力し、これを用いてキラルな化合物合成反応（クロスカップリング反応や不斉酸化反応など）を検討し、金属ナノ粒子が反応の触媒として作用するかを調査していく。
先行研究により合成したアミノピレン基を２つ導入した環状ジアミノセレノシクロファンによって得られたパラジウムナノ粒子においては、ナフタレン誘導体同士の鈴木-宮浦クロスカップリング反応における触媒作用を確認しており、中～高収率でカップリング生成物を与えるという実験結果が得られている。この結果も踏まえ、触媒作用が確認された反応においては、反応条件の最適化を行っていく予定である。
さらに、最近アミノフェロセン誘導体を導入した環状ジアミノセレノシクロファンの合成にも成功しており、これを用いた新奇なレドックス反応触媒への応用と情報記録分子としての活用も視野に関連研究をスタートさせたところである。
本研究の実施により得られた成果の一部に関しては、本年度５月に開催が予定されている「ナノ学会 第２０回大会」にて発表予定である。今後は、学会や討論会での発表を通じた他の研究者とのディスカッションや関連分野の研究者の助言も得ながら、研究内容をさらに発展させ、論文発表等を行っていく予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
学会調査用旅費として保留していた4.2万円程の予算に関しては、参加を予定していた３月開催の学会がオンラインに切り変わったことで未執行の状態となった。この予算に関しては、令和４年度の配分予算と合算して実験試薬・器具の購入費として執行していく計画である。
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