研究課題/領域番号 |
20K05277
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
迫野 奈緒美 富山高等専門学校, その他部局等, 講師 (10734387)
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研究分担者 |
津森 展子 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (20390437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンポジットナノ粒子 / 気相合成 / コアーシェル型 / 合金型 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
近年、複数金属で構成されるコンポジットナノ粒子は、単一金属ナノ粒子に無い、もしくは単一金属より高い触媒能を示すことが報告されている。その理由として、粒子を構成する金属元素間の電荷移動が関与すると考えられている。これは、触媒能の発現に、ナノ粒子を構成する元素の配置(ナノ構造)が大きく影響することを強く示唆する。しかし、コンポジットナノ粒子の触媒能発現とナノ構造の相関は、ほとんど研究されていない。その一因として、ユニフォームにナノ構造を規定したコンポジット粒子を作製することの困難が挙げられる。 本研究の目的は、蒸発濃縮法により作製したユニフォームなコンポジットナノ粒子を用いて触媒活性を評価し、ナノ構造と触媒能の相関を体系化し、触媒メカニズムを解明することである。コンポジット粒子の触媒メカニズムの解明は、合理的な触媒設計に大きく寄与し、触媒活性の向上なども期待できる。そのためには、ナノ粒子を構成する元素のモル分率を自在にコントロール可能な粒子精密合成の技術確立が不可欠である。 蒸発濃縮法は、気相合成法の1つである。ナノ粒子合成の一般的手法である液相合成法と比較すると、保護剤や還元剤等の不純物を含まずにナノ粒子を合成出来ることや、還元電位による構造への影響を受けない事が利点にあげられる。これらの利点を活かすことで、ユニフォームに自由自在なコンポジットナノ粒子が合成出来る可能性がある。 2年度は、初年度に得られたナノ粒子の構造解析および電子状態の評価を行った。これにより、得られたナノ粒子はどの条件においてもユニフォームな合金型であること、および電子状態は条件の違いに関わらず変化しない事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、合金型ナノ粒子合成の再現性を確認することが出来た。また合金型ナノ粒子について、パラメーターの1つである加熱温度を変化させることで、ナノ構造を変えることなくモル分率を変化させることが出来つつある。 2年度は、走査透過型電子顕微鏡観察およびマッピング分析・ラインスキャン分析により、作製したナノ粒子の構造解析を進めた。これにより、どの条件においても合金型ナノ粒子が合成されている事を確認する事が出来た。さらに、X線光電子分光法を用いて、ナノ粒子中の原子の電子状態についても評価を行った。どの実験条件においても電子状態は変化しない事が示唆された。 当初の予定でも、1、2年でナノ粒子合成に重点を置いていたことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの結果を論文として発表すること、および得られたナノ粒子の触媒活性に重点を置いて研究していきたい。 論文については、初年度および2年度の結果を元に、物理化学系もしくはコロイド関連の雑誌に投稿することを目標としたい。モル分率の異なるコンポジットナノ粒子が気相合成法でも合成可能であることを主軸として、構造評価や光特性評価を交えた議論を行いたいと考えている。 また、得られたナノ粒子の触媒活性評価については、p-ニトロフェノールの還元反応における触媒活性評価を行い、モル分率と触媒活性の関係についても議論していきたい。さらに、COの低温酸化における触媒活性も評価し、液相合成法によって得られるコンポジット金属ナノ粒子との比較を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより年度内に2度の濃厚接触者認定となり、研究に従事出来ない時期があったため。現在は職場に復帰しているため、2年度の後半部分の実験からスピードアップして行っていきたいと考えている。
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