研究課題/領域番号 |
20K05278
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柳沼 晋 長野工業高等専門学校, リベラルアーツ教育院, 准教授 (80516518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノ構造 / アモルファス合金 / 溶媒 / スパッタリング / レーザーアブレーション / プラズモン |
研究実績の概要 |
本研究は、アモルファス合金の非晶質由来の特性をベースに、イオン液体へのスパッタリングを用いることにより、アモルファス合金ナノ流体を作製する技術を構築し、生成物となるナノ粒子やナノワイヤーの表面増強ラマン散乱(SERS)効果を検証することを目的とした。本年度は、当初の最終年度であったが、アモルファス合金ナノ粒子のプラズモニックな特性の解析を継続しながら、後述する三元系と四元系の研究項目に1年遅れで取り組み始めた。 研究全体の律速となっていた実験に二つの進展がある。一つ目は、プラズモニック特性の探索という本来の目標達成を優先するため、ナノ構造の作製手法を再検討したことである。その結果、新たな試みとして、液中レーザーアブレーションの導入を決意し、金沢大の実験装置を利用させていただいた。ターゲットは三元系で、ナノ粒子におけるMie効率のスペクトルを解析済みのPd-Cu-Si合金を用意した。アブレーションの複雑な実験パラメータは、合金組成を除いて先行研究に倣い、その再現性を確認するため、溶媒には水、試料には純金属Pdを用いた比較実験を行った。二つ目は、四元系に着手し、その基本的な物性を調べたことである。合金組成は、2019年にSERS材料として有望との報告がなされたZr系合金の一つであるZr-Cu-Co-Alに的を絞り、ガラス転移温度や電気抵抗率を測定した。現在、これらPd-Cu-SiおよびZr-Cu-Co-Alについて、アモルファス合金ナノ構造の合成・分散化からSERS測定・電磁界解析に至る研究ループを進める上で有用な知見が得られたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究課題名であり当初の研究目標でもある電場増強効果の検証までは至らなかったことから、「遅れている」と判断した。全研究期間である3年間を通してコロナ禍の影響を受け続けたため、これを背景・遠因として、業務量の増加や私自身の怪我が重なったこと、研究遂行に想定よりも時間を要したこと、研究計画の見直しも必要となったことが理由である。1年目からシミュレーションを優先させるなど研究計画を軌道修正した上、令和4年度には三元系と四元系のアモルファス合金(2年目以降に実施予定)について予備実験を開始できたものの、最初の2年間の遅延を取り戻すことができず、補助事業期間延長を申請し、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
低蒸気圧液体(イオン液体など)へのスパッタリングと同様、純金属や合金を対象にナノ粒子を合成・分散安定化できる手法として開発されてきた液中レーザーアブレーションを、スパッタ法に相補的・相互的なナノ流体作製手法として本格的に導入する。当面は令和4年度に引き続き、金沢大に現有のレーザーシステムをはじめとした実験装置を利用させていただき、三元系のPd-Cu-Siを試金石として、アモルファス合金ナノ流体の試料作製から電磁界解析まで進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) コロナ禍に伴う研究計画の遅延により、補助事業期間の延長を申請せざるを得ない状況にあった。一方、昨年度まで停滞していた学外の研究者との打ち合わせや共同設備の利用が再開される中、申請設備であった2本目のスパッタカソード(特注品)を追加しなくても、ターゲット自体へ工夫を凝らすことで、合金組成の元素を同時にスパッタできる見通しが立ったため。さらに、液中レーザーアブレーションの有効性と将来性が明らかとなり、物理蒸着とも両立できると見込んだため。 (使用計画) レーザーシステム一式(納入予定時期:令和5年10月頃)の購入費用(330万円程度に対する合算使用)に充てる予定である。
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