研究課題/領域番号 |
20K05283
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研究機関 | 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室) |
研究代表者 |
龍 直哉 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (90743641)
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研究分担者 |
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 円偏光ルミネッセンス / 蛍光 / キラリティ / 分子集合体 / メタルフリー有機色素 |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初計画通り、有機色素に強い蛍光と高純度の円偏光発光(CPL)特性を同時に誘起できる自己集積分子の設計・合成、およびこれらの誘起に最適な複合化条件の検討に取り組んだ。その結果、いわゆる蛍光色素に匹敵する強い蛍光性だけでなく、メタルフリー有機色素として世界トップクラスの非対称性因子をもつCPL特性も誘起できる系の構築に成功した。 α-アミノ酸の一つであるリシンから、アニオン性両親媒性化合物を合成した。このリシン誘導体は、水中において、二分子膜を基本骨格としたヘリカルリボン状集積体を形成していることを示差走査熱量測定および電子顕微鏡観察により確認し、また分子レベルにおいてもキラルに配向していることを円二色性(CD)スペクトル測定により確認した。この集積体の水分散液にカチオン性シアニン色素を加えたところ、元来この色素はほとんど蛍光を示さないにもかかわらず、強い蛍光が観測された。この複合体の量子収率およびモル吸光係数は、それぞれ0.70、390,000M-1cm-1と見積もられた。また、CDスペクトルを測定した結果、0.16の非対称性因子をもつCDシグナルが現れ、さらに0.14の非対称性因子をもつCPL特性も観測された。このとき、シアニン色素はイオン結合および疎水効果により集積体分子間に単量体として埋め込まれた状態となっており、集積分子の強いパッキングにより色素の分子運動が抑制されたため、量子収率およびモル吸光係数が増大したと考えられる。さらに、集積分子のキラル配向に伴い、色素分子もキラルな配向状態を形成したため、CDおよびCPL特性が誘起されたと考えられる。 本年度の成果は、色素分子を直接会合させることなくキラルに配向させ、なおかつ分子運動を抑制するという戦略が、強い蛍光と高純度のCPL特性を併せもつ材料の開発に有効であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、2020年度から2021年度にかけて、メタルフリー有機色素に強い蛍光と高純度の円偏光発光(CPL)特性を同時に誘起できる自己集積分子の設計・合成に加え、これらの誘起に最適な複合化条件および色素特異性について検討することを予定していた。実際に、2020年度の1年間において、自己集積分子の設計・合成および色素特異性について2年計画の一部を進めることができ、また複合化条件について、蛍光・円偏光発光特性の誘起に最適な条件を見いだすことができた。その結果、蛍光色素に匹敵する発光特性をもちながら、現時点でメタルフリー有機色素系においてはトップクラスのCPL非対称性因子を達成することができた。 以上のことから、当初の計画通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、2020年度に引き続き、メタルフリー有機色素に強い蛍光と高純度の円偏光発光(CPL)特性を同時に誘起できる自己集積分子の設計・合成および色素特異性について、研究を進める。具体的には、集積分子については、アルキル鎖やアミノ酸側鎖の長さ、頭部基やカウンターイオンの種類などを変更し、色素と複合化した際の蛍光特性およびCPL特性を評価する。とくに、カウンターイオンとしては、キラル分子の導入を計画している。色素分子については、シアニンだけでなく、ヘミシアニン、ピレン、ローダミン系などについて、分子集積体に埋め込まれた際の蛍光特性およびCPL特性を評価する。これにより、さらに高いCPL非対称性因子を有する系の構築を目指す。最終年度には、得られた円偏光発光材料のフィルムやインク、レーザーなどへの応用性について評価することを予定している。
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