研究課題/領域番号 |
20K05285
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
佐野 健一 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (80321769)
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研究分担者 |
池添 泰弘 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (70334315)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞内デリバリー / コイルドコイル構造 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが創製した塩基性の細胞透過性ペプチド(CPP)と剛直で高いアスペクト比を持つナノ材料のいわゆる「良いとこ取り」したDDSキャリアであるCCPC 140は、CPPと比べ100~1000倍にも達する高い細胞透過活性を示す。既知のCPPによる細胞透過には,細胞表面の酸性のグリコサミノグリカン(GAGs)と塩基性のCPPの電気的な結合が活性化するエンドサイトーシスが主要な役割を果たす。本研究では、CCPC 140の物理化学的な性質とGAGs依存的なエンドサイトーシスの関係に着目して行った。 R2年度に引き続き、各種エンドサイトーシス阻害剤投与によって、CCPC 140およびその派生体の細胞透過活性を評価した。その結果、GAGs依存的にcaveolaエンドサイトーシスを活性化することが明らかになった。このエンドサイトーシス経路は、表面電荷が中性のCCPC 140派生体でも観られたが、構造を取らない派生体では活性化が観られなかった。既知のCPPでもこのエンドサイトーシス経路の活性化が観られない報告があることから、剛直で高いアスペクト比を持つという物理化学的性質に起因する主要な細胞透過機構であると考えている。 CCPC 140は、GAGsとの結合によって活性化されるエンドサイトーシスを主要な細胞透過機構としているが,それ以外の細胞表面の酸性糖鎖であるシアル酸などとの結合依存性のエンドサイトーシスも高い活性を示すことが明らかになった。 また、TurboID法による網羅的なCCPC 140と相互作用するタンパク質の探索とシグナル伝達経路の同定に向け、CCPC 140-TurboID融合タンパク質の発現系の改良を進めている。これは、R2年度に作成した融合タンパク質の溶解度に問題があったためで、リンカー配列の最適化を進め、溶解度の向上した融合タンパク質の発現に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は、CCPC 140の物理化学的特性が活性化するグリコサミノグリカン(GAGs)依存的なエンドサイトーシス経路について、そのパスウェイ解析とCCPC 140が細胞表面に結合することによって細胞膜に与える物理刺激を定量的に評価するものである。前者は、阻害剤を用いた解析は極めて順調に進んでいる。またパスウェイ解析の鍵となるTurboID法については、融合タンパク質の作成に目処がついたことから、概ね計画通りと言える。後者の物理刺激の定量評価について、研究分担者による装置の改良がさらに進み、安定性や感度が向上した。これらの結果を鑑みて「概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるR4年度は、TurboID法による網羅的なCCPC 140相互作用タンパク質の同定、シグナル伝達経路の同定に注力する。またR3年度の成果を元に、CCPC 140のモデル細胞膜への吸着と物理刺激の定量評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、環太平洋化学会の開催がオンラインとなり、予定していた旅費経費が繰越となった。研究成果は順調に出てきているので、主に論文掲載料や英文校正などの成果発表に関連する経費とする予定である。
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