本研究は,植物の根および地上部の成長挙動,および機械特性(硬さや成長時に発生する推進力)を解析可能なマイクロセンサデバイスを開発し,重力や病害虫,化学物質などの外部刺激を与えた際の力学的応答を定量的に解析することで,植物の成長最適化に関する知見を獲得することを目的とする。さらに,本手法を発展させ,温度や養分など多様な環境要因を考慮した分析プラットフォームを確立し,将来的には栽培技術の最適化や品種改良への知見の獲得を目指す。今年度は,昨年度までに開発したマイクロピラーデバイスを用いた根の伸長挙動解析を主に行った。本研究では,マイクロピラーの直径および一対のピラー間の間隔の寸法を変化させることで根に与える機械抵抗を制御し,異なる条件下での根の成長挙動を顕微鏡によりリアルタイムで観察を行った。モデル植物であるシロイヌナズナを対象とした本手法による解析の結果,比較的低い機械抵抗を与えた状態で根を成長させた場合において,伸長速度は周期的な変化が生じ,機械抵抗を除荷した後も周期的変動を維持することを確認した。また,機械抵抗が無負荷の条件と比べ,伸長速度が一方で,機械抵抗が高い条件下では伸長速度が減少するとともに,周期的変化が抑制されることを確認した。以上の結果より,植物は一定の機械抵抗を付加することにより,外部刺激に応答して伸長挙動を変化させることが示唆された。
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